約束はオレンジ色＿skab

＊２３ ページ24

今日はそれスノの収録日。
楽屋で２本目までの待ち時間を潰している。


「いやいやいや強すぎだわ。」
「まあ佐久間にかかればこんなもんよ。」


佐久間はふっかと一緒にいる。
なんか佐久間がスマホを持ってて、ふっかがそれを覗き込んでる感じ。


「このゲーム一緒くらいに始めたよな？」


どのゲームの話だろ。
俺もやってるやつかな。
ドラマの台本を読むはずが、気付くとそっちの会話ばかり気になってる。


「そうそう。
ま、でも愛の大きさの違いってやつ？」
「課金額の違いの間違いじゃね。」
「んははっ、それもある。」


ふっかのトレーディングカードも使う金額はすごそうだし、課金先の違いでやってることほぼ同じだけどね。
だから俺からするとどっちもすごいよ。


「でも、」


突然佐久間の声のトーンがぐっと低くなるのを感じた。


「愛の大きさの違いも、結構マジな話。」
「、は？
あー、嫁への愛？
それは負けるわ。」
「んー、それもあるけど。」
「何？
謎なんだけど。
ゲーム愛？」


ふっかも佐久間の話が見えないって声色から伝わってくる。
俺も分からない。
これは難問。


「ううん。
阿部ちゃん愛。」
「は？」


あ、思わず声出ちゃった。


「あ、聞こえてたー？」


ニコニコ、と音が聞こえそうな顔で佐久間がこっちを見た。


「や、急に俺の名前聞こえたからビックリして。」


本当は全部聞いてたけど。


「つうか阿部ちゃん愛で課金って何？」
「このゲーム阿部ちゃんもやっててフレンドになってるじゃん？
その枠の中で俺が１番じゃなきゃ自分で自分に納得いかねぇなって。
あと阿部ちゃんって人とゲームの話すると佐久間もやってるって名前出してくれるからさ、紹介された時弱っちいのはかっこ悪いじゃん。」
「や、え、そう？」


分からないって顔してるふっか。
うん、俺も分からない。
強くてすごいねは分かるけど、スマホのゲームはハマる度合いなんて人それぞれだし。
あんまり気にならないと思うけど。


「そう。
まあつまり」


つまり？
俺もふっかも首を傾げる。
佐久間だけがいわゆるドヤ顔をしていて、その顔でこう言い切った。


「阿部ちゃんの周りにいる奴ら全員にマウントとりたいんだよね。」


は？


「はあ…」


ふっかドン引きしてるし。
俺も上手く言葉を処理しきれてないっていうか、なんと言うか。

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