約束はオレンジ色＿skab

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でもそれが、今俺の思いつく最大の恩返し。
どうかな。
少し驚いた顔の佐久間をそのまま見つめた。
そうすれば柔らかいオレンジに染まった佐久間は、くりくりの目をへにゃりと細めた。


「じゃあさ、」


その声までもが柔らかく２人きりの世界に響いた。


「もし俺が３０歳になる日、お互いフリーだったら付き合おうよ。」
「、へ。」


俺と佐久間が付き合う？
確認したかったけど聞き間違えでしたとか思いつきで言ってみただけだとか返ってくるのが怖くて心の中でだけ疑問をぐるぐるさせる。


「だって一緒にいてこんなに居心地良いんだよ？
ならちゃんとした大人になった時、もしフリーなら絶対付き合った方が良いと思うんだよね。」
「なるほど…。」
「だから阿部ちゃんが素敵な日にして。
楽しみに待ってる。」
「分かった、頑張る。」





「ってことがあったから５日は２人で過ごす時間が欲しくて。」
「ほお…、なんやすごい話しててんな。」
「アイドルとしてやっていくための武器を持とうってことがお天気もクイズもそもそものところではあるけど、ここまで継続して頑張れたのは佐久間の存在が大きいんだよね。」


下の子たちの指導が出来て、自分自身にも厳しくて。
けど厳しいだけじゃなく優しさも持ち合わせている、そんな佐久間に見合う大人にならなきゃと胸に誓った。
佐久間が３０歳を迎える日、堂々と隣に立てるように。
そしてそう思うと辛い時も頑張れた。
俺を強くしてくれた。
それが、佐久間のくれたオレンジ色をした約束。


「さっくんの約束も存在も阿部ちゃんの人生には欠かせない存在っちゅうことやな。」


その言葉に、えへへと照れた笑いを零す。
誰かにこの約束を見せびらかしたいとか承認されたいなんて考えたことなかったけど、でも理解してもらえるって気持ちがほこほこと温かくなる。


「ちょっと重いかもしれないけど、そういうことかな。」
「恋する乙女だねぇ。」
「それはなんか違う！」


ぱたたたっと手を横に振る。
そんな可愛らしく夢見てるようなの柄でもない。
ただ、大切にしてるだけ。


「トイレ！」
「へえへえ、いってら。」


ふっかは含みをもたせたような笑みを浮かべていたけど、イジられるのはごめんだともうそれには触れずトイレへ逃げ込んだ。







よし、仕切り直し。
ふっか達がいる個室へと戻る。
ここだったよね。
引き戸に手をかけ扉を開けようとした。

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