猫かぶり少女の憂鬱

獲物は逃がすな ページ33

あ「ごめんね」

業くんの背中は大きくて、何故だか安心感がある。

久々だな、こんなにあったかい気持ち。

業「…何が？」

本当は何となく掴んでるくせに、そういう聞き方をする

カウンセラー向いてるんじゃない？なんて口に出せる訳もなく

あ「これをクラスの子に見つかったらややこしいよね！って話！」

誤魔化した。

業「ん〜？俺は別に好都合だけど？」

そういう関係になれば、わざわざ理由を作らなくても一緒にいれるでしょ

と、見えないけれどきっと意地悪い顔をして言ってる。

あ「…そういうのはちゃんと好きな人にしなよ？」

私はあえて明るい調子で、満更でもないように声のピッチを上げた

───ただ、あなたに依存しすぎるのは私にとって…

何よりも業くんにとって良くない。

業くんを拘束してしまう。枷をつけてしまうから。




私は、あなたの自由を奪ってまで、責任取れるような人間じゃないの




業「…は」

あ「あ〜着いた！快適だった〜ありがと」






業side

"好きな人にする"…？

よく分からない心に何か、びりっと衝撃が走った

半ば放心状態の俺をよそに、Aちゃんの降ろして〜って声で、我に返って

業「あ、はいはい」

背中にあった温もりが遠のいていく

あ「休み入るし、とりあえず大人しくしとくよ」

業「もうすぐ修学旅行だしホントに体調整えなよ？」

過保護だなーなんて言いつつAちゃんが家へ体を向ける

背中の温もりと共に何か、消えそうな気がした。

俺の直感が、告げている。



"獲物は逃がすな"



細い白い彼女の腕を掴んだ、パシっという音が静かな空気に響く

あ「え？」

業「…」

困惑した彼女の顔は本当に…何も分かってないんだろうなと自覚した

と、同時に俺の気持ちに俺自身が驚いている





業「俺から逃げれると思うなよ」





Aside

業「んじゃ、月曜日の朝迎えに行くからね」

ぱっと手を離した業くんは、ニコニコ笑顔で去っていった

あ「は……？」

逃げれると思うなよと言った時のあの顔…

獲物を捉えたようなあの瞳。




部屋に駆け込んだあと、時間が経つ事に体の熱が高まってくる。

熱のせいなのか、それとも………

あ「ばか…」

今はとにかく現実から目を背けたくて、瞳を閉じた。

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