5話 ページ7
大和守安定に案内されて、手入れ部屋まで歩いてく。
目を覚ます様子のないへし切が心配だったし、よく見たら安定もボロボロで血の匂いが漂っていた。
手入れ部屋から漂う異臭は明らかに尋常じゃなくて、血の匂いが目に染みた。
襖を開けて手入れ部屋は入ると、そこは地獄と形容して良かった。
私よりずっと小さい、子供たち。ちょうど弟くらいだろうか。
そんな子たちが血だらけで、蹲っていた。
いてぇ…いたい、いたい…そんな声がどこもかしこも聞こえてくる。
「山姥切！治す力私にあるんでしょ！？どうすればいいの！？」
眉を顰める山姥切に問い詰める。
「霊力を使うんだよ。でもどうせ直さないんだろう…？こんな生き地獄味わられるくらいならいっそ折ってやってよ。」
私の質問に山姥切でなく、安定が答える。
霊力のざっとした説明は女性から受けていた。
「ここにいる全員治します！怪我の大きい人から連れてきて！」
声を張る私に山姥切が反対する。
「おい、あんた！無理だ！霊力が尽きたら死ぬことを、知らないのか！？こんな大勢は一度に無理だ！」
山姥切が私を心配してくれているのはわかる。
「大丈夫、山姥切。治せるよ。どうすればいいか教えて？」
山姥切の肩に手を置いて目を合わせる私の決意を感じ取ったのか、山姥切が話し出す。
「男士の刀を…打ち粉で手入れするんだ…」
苦しそうに言い淀みながら山姥切は続ける。
「手入れは霊力を使うから…ほんの少しでも疲れたと思ったらすぐやめてくれ…」
山姥切に大丈夫と一言告げると、手入れを開始した。
手入れは霊力を使うというのは本当のようで…打ち粉を使う度に命を削っている気すらしたが、小さな子達の苦しむ声に突き動かされるように、必死に手入れをした。
なんでこの子達がこんな目に…途中涙が止まらなくて、山姥切が指で拭ってくれた。
傷ついた子達はほとんど子供か少年で、青年といえるのはへし切だけだった。
最後へし切が終わると同時に、私はふっと意識を手放し、最後に見たのは心配そうな山姥切の顔だった。
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