21話 ページ23
「あの…もう少し言い方ってあるんじゃないですか……？」
控えめに言うつもりだった私の声は思ったより怒気を孕んでいたが、男は全く動じる様子はない。
「部外者は黙れ、戦えないものはいらない当たり前のことだ。そんなやつに掛ける言葉なんてないんだよ。」
事実だけを淡々と告げるような男の口調。
どんどん重くなっていく雰囲気に耐えられないとでも言うように、男の子が自分の耳を塞ぐ。それは、怒られる時の妹の仕草と同じで、私は以前理由を聞いたことがあったんだ。
何も聞きたくなくて、自分が消えたくなっちゃうときにやるらしい。この男の子もそうなのか、それはわからないけど……。
「言いたいことはそれだけですか……？」
自分の感情が抑えられなくて、怒りがふつふつとく湧き上がってくる。後ろの山姥切の困惑も感じ取れないくらい、視野が狭くなるのを感じた
「ほかにあると思うか？」
挑発するように続ける男に、だんだんと足音を立てて詰め寄る。下ろした拳を強く握り、全身に力が込められる。
「ふざけんな！！！！」
殴ってしまった、自分より幾分か上にある顔を。
あ、やってしまった。瞬間に、頭に妙に冷静な自分が湧いてくる。
人を殴るのは3度目だった。1人目はお父さん、2人目は弟をいじめた弟の同級生。
───────
────
「本当にすみませんでした……。」
客間まで男を通し、向かい合って座ると深々と頭を下げる。
赤く腫れた頬を冷やしながら、男が口を開く。
「俺がひどい人間に見えるか？」
意外と声音は怒っていなかった。
「その…言い方の問題で……」
「君は青いな。現実を受け止められていない、弱い者に甘いのだな。」
前線で激しい戦いが起こっていることは、全く帰らない父で理解していた。
「前線の戦いが激しいということはわかっているのです。殴ったことに関してはすみませんでした。」
再度謝ると、もう十分だと言わんばかりに男が遮る。
「俺には君と同じくらいの娘がいる。生んですぐ審神者になったから、もう顔はわからないが。」
話の壮絶さに驚くと共に、全く話が見えなかった。
「政府は馬鹿だと思うよ、ブラック本丸問題を解決する前に我々は負けるだろう。」
またもや話が見えなくて、頭を必死に回す。
「今日来たのは、何もあずけに来ただけじゃない。君も前線にきてほしい。」
政府の人からは、安全な本丸で治すだけと聞いていたからその言葉に驚いた。
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