18話 ページ20
「がっはっはっはっ！！ありがとうなぁ！主よ！」
大口を開けて笑う岩融は、意外にも私に好意的に接してくれた。正直、もっと嫌がられるかと思っていたし、ひどいことを言われる覚悟も出来ていた。
その旨を伝えると、岩融はもっと笑った。
「はっはっ！俺は小さなものが好きでな！主はとても小さいな！それと、最近本丸の雰囲気が変わってきているのがわかるぞ。短刀達を中心に明るくなってきているな！！ありがとう主！！」
岩融は体格の通り豪胆な男だった、本丸の様子が変わってきてると言われるのは嬉しかったし、なによりありがとうの一言になによりも救われるのだ。
「新しい主はみんなを手入れしてくれたし、優しくていいな！！」
ひとしきり笑い終えると、ただな…と岩融が続けた。
「ただな、主。主が短刀達やこの本丸に危害を加えるというのなら俺は容赦はしない。」
真顔でそう言ってのける岩融は明らかに本気で、笑顔で少し緩んだ私の表情を引き締めるのには充分だった。
ぴりりと走った緊張を吹き飛ばすかのように岩融は笑う。
あとから聞いた話なのだが、岩融の大怪我は傍若無人な前の審神者に反発し、罰として重傷で放置されたことが原因らしかった。
かなり長い間放置され、完治せず後遺症が残ることを岩融に告げても、岩融はがははと笑い続けた。
笑いながら、「命すら無いかもしれなかったんだ、ありがとう。」ともう一度お礼を言った岩融の瞳に、うっすらと涙が浮かんでいることに気がついてしまった。
刀剣男士のそれぞれの過去は、私は全く知らなかったけれど、その日見た岩融の涙はこのなかの誰よりも人間らしかった。
──────
───
夜の本丸だが奇跡的というべきか何も起こらず、執務室まで着くと、薬研と長谷部にお礼をし明日は遅く起きてもいいと伝えた。
薬研と長谷部にかなり無茶を注意されたが、あなたたちがいるから無茶ではありませんと言うと、すごすごと下がっていった。
その間ずっと無言の山姥切が気になって、｢山姥切？｣と声をかけるも返事はない。
「山姥切？どうしたの？あなたの忠告をいつも破ってしまうのは悪いと思ってるよ…でも……」
山姥切がふくと、フードもありまったく表情が見えない。
「麻─…あんたはもう少し…自分の身も大切にした方がいい……自己犠牲が多すぎる…」
下を向いたまま、ぶつぶつだ話し出す山姥切。
唇を噛み締めてるのか、少し聞き取りずらかった。
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