心隠して動隠さず【夜久衛輔】

隠さず３１ ページ31

バスの揺れる音だけがいやに響く。



しんどかったんだよ。



高校生活。私と夜久だけが甘くて、黒尾はずっと苦かったんだ。ふと、昔の彼の言葉が頭をよぎる。










『俺この会話好きだわー』










たしか、夜久がゴリラを潰した時。私はありがとう、なんて返したが、全て間違っていたというのか。



ああ、最悪だ。彼の芽吹いた感情を根本から踏み潰し、育たないまま枯れさせてしまった。



黒尾から告白されていたとしても私は夜久を選ぶだろうから末路は一緒。でも、それは問題じゃないのだ。










「......俺も、やっちまったって思った。告白したことは後悔してないけど、全部、間違ってたんじゃないかって」










でもな、と夜久が微笑を浮かべる。突然の表情の変わりように頭が混乱した。










『マジ、かよ......』



『マジマジ。あ、でも申し訳なく思う必要はねえよ』



『いや......』



『本気で、叶わなくていいと思ってたんだよ。お前らがくっついてくれりゃいいなって、ホントに思ってた』










そのときの黒尾は、どんな顔をしていたのだろうか。



答えはきっと、涙でくしゃくしゃに歪むわけでも、夜久を憎むわけでもなく、ただ純粋な清々しい笑顔。










「だから、Aが心配する必要はねえよ」










だってアイツは。










「黒尾は、どうしようもなくいいヤツだからな」






　














元カノ報道【影山飛雄】
新作です、ぜひ。

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