心隠して動隠さず【夜久衛輔】

隠さず４ ページ4

夜久衛輔もアピールはする。










「夜久は好きな人いねーの？」










教室から出るには、そんな会話で盛り上がっている夜久の席を通らなければならない。なんとなく澄ました顔でカクカク歩いて、扉の方に近づいた。










「好きな人って、そんなの......」










パチリ。一瞬、確かに目が合って、夜久の瞳が大きく見開かれた。私も私で、心臓が大きく跳ねる。










「まあ、気になってるのはいるな。別にまだ好きじゃねえけど！」











夜久が突如、声のボリュームを異様なほどに上げ、ちらちらと私に視線を送る。好きな人が近くを通るときにちょっと気付いてほしくて声量を上げるって......小学生男子か。



笑いそうなのを必死で堪えて、扉に右手を掛ける。すると、空いた左手を熱の籠もった手でぎゅっと掴まれ、屈託のない笑みを浮かべた夜久と目が合った。











「Aはいねーの？ 好きなやつ」

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