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白鷲が五羽 ページ5

今日の及川は、見えている。



及川が正セッターの試合、今はウチのチームが優勢。彼の動きはいつもの120%って感じで、ボール、スパイカー、相手ブロッカー、会場の空気、全てが見えている。










「¡izquierda!」










彼が、ツーのモーションで相手の視線を引き付けて。誰もが打つと思った瞬間、レフトにボールを振った。



エースの攻撃が、ノーマークで決まる。ちらりと見えた彼らの表情が楽しげで、胸の奥に鉛が落ちるような感覚がした。



すかさず取った相手のタイムアウト。気分の良さそうな及川が、マネージャー代わりとしてベンチに入った俺にドヤ顔を見せつけてくる。









「......ナンスカ」



「んー? 別にぃ?」



「ていうか、集中切らさないように一人でなんかやってなくていいの? 高校の時やってたじゃん」



「今はコミュニケーションのほうが大事だと思ったからね。時と場合によるよ」










次は及川サーブのターン。プロのチームに入ってもその殺人級はよく目立つ。










「.....ナイスサー」










それはほんの一瞬、瞬きの間に、ネットを越え、相手チームに落ちている。



うおおおおとチーム全体が盛り上がり、相手の士気は地の底。コート内のレギュラーメンバーは肩を抱き合って喜んでいる。



俺は、必死でボールを追ったわけでもない。その光景を、見ているだけ。それなのに、どこか息が苦しかった。









『柚須程度の野郎には絶対取れないサーブにしてやる!』



『俺、レシーブもそこそこ上手いと思うよ』



『知ってる! ムカつく! だからぶっ倒す!』










そんな会話をしながら、俺たち二人で練習したはずなのに。



この気持ちは、及川への嫉妬ではない。及川と同じコートに立っている、仲間への嫉妬だ。



バレーボールを愛せない俺の嫉妬は、闘争心なんて綺麗なものじゃない。ただ、仲間を憎むような、汚いもの。



それが自分がコートに居られない理由と知っていようと、消せるような感情じゃなかった。

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作者名:イルカ | 作成日時:2024年4月13日 16時

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