白鷲が三羽 ページ3
「ていうか、スパイカーに転向するって連絡が来た時はビビったよね」
苦笑を浮かべ、頬杖を付きながら及川が言う。連絡をした時の及川と言ったら、驚きすぎて、電話口に声を掛けても30分くらい応答がなかった。彼が言うには気絶してたらしい。
「急になんで俺のトス打ちたくなったのさ。俺のこと嫌いだったよね？」
「嫌いっていうか......苦手？」
スパイカーいいな、と思ったのが先で。
俺の周りには凄いセッターが沢山いるけれど、一番最初に思い描いたのが及川だった。スパイカーが点を取ったときの彼の笑顔は、純粋とはまた違うなにかを含んでいる。
俺が一番怖いと思ったセッターは、脅迫でも、トラウマでもない。及川徹という人間だ。
「へー、わざわざ一番怖いの打ちに来るとは。ドＭだねえ」
「違うし。ノット純粋マンは黙っといて」
「俺の笑顔はいつもまっすぐ純粋だよ！ って前に岩ちゃんにも言った気がする！」
「あ、そういや卵爆破大王サマは成長したのかな？」
「もう割らないし！ ていうか柚須のウザさが成長してる嫌だ！」
あー、それはツッキーくんと宮侑と......ほとんどはアンタのせい。
最悪ー！ と騒いでいた及川が突然動きを止め、俺と目を合わせる。その真剣な眼差しに、背筋が凍った。
「......まあ正直、そんなことはどうでもいいんだよね」
長めのため息を吐いて、ふっと口の端で笑った。まっすぐ、純粋に。
「おかえり、柚須」
「......いや単身赴任だった夫婦かよ」
「ちょっと!? そこはただいまって言ってよ！」
「ゴメンあまりにもツッコみたくて」
「わかるけども！ 俺も言いたくなったけども！」
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作者名：イルカ | 作成日時：2024年4月13日 16時
