8 ページ8
エラ、と呼ばれるようになって数日。
私は快適な軟禁生活を送っていた。
私の面倒を見てくれるのはジョディとジェイムズ、そしてアンドレ。
私はここでの出来事にいちいち驚いてばかりだった。
初めて知る人の温かさは勿論、ご飯の美味しさ。そして、安心して眠れる環境。
私が暮らしていた世界がいかに普通でなかったのか思い知らされていた。
「エラ。お勉強の時間よ」
ジョディが薄い冊子を持って部屋に入ってくる。
私はあからさまに顔を顰めた。
「嫌よ、英語なんて知らないわ!」
私は勉強が何よりも苦手らしい。
幼い頃からあの小さな部屋に閉じ込められ、まともな教育なんて受けてこなかった。だから、ここで初めて受ける勉強は、嫌で嫌で仕方なかった。
ジョディは私がアメリカで近いうちに暮らすようになることを考え、英語を教えてくれていた。私はベルモットのおかげで日常英会話ぐらいならできていたが、文法はさっぱりだった。
「話せれば良いでしょ?!」
「文章が書けなかったり読めなかったりしたら、これから先困るのは貴方なのよ?!」
今日も私とジョディの声がFBI日本本部に響き渡る。
また、スコッチ…ヒロは日本語を教えてくれた。漢字なんて何もかも知らなかった私を、ヒロは根気強く教えてくれる。
そして、ジェイムズは必要最低限のマナーを教えてくれた。
ここで暮らすようになって一ヶ月もすれば、証人保護プログラムの準備も終わり、私とヒロは日本から出国することになった。
「これが貴方達の戸籍よ」
ジョディは私達に戸籍謄本とパスポートを手渡す。
そこには【緑川A】と書かれていた。
「これが私の名前…?」
「ええそうよ。貴方の場合、戸籍がそもそも無かったから、1から作ったわ。ヒロミツの妹である設定」
「おいおいおい、年離れすぎてないか?15も離れてるぞ?」
ヒロが少し焦ったような声を出す。
「まぁ、良いじゃない。緑川光さん?」
「ヒカル?それがヒロの新しい名前?」
私が尋ねるとヒロは頷いた。
「嗚呼、緑川光。戸籍上の君の兄だ」
「渡米して暫くは、FBIの中で暮らしてもらうことになる。少し不自由な暮らしだとは思うが、頑張ってくれ」
ジェイムズが私の頭を撫でながら言った。
「あのね」
と、私はジェイムズを見上げる。
「本当に、ありがとう。また会えるよね…?」
ジェイムズは目を細めて、力強く頷いた。
550人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
莉咲(プロフ) - 因みに私の夢主ちゃんのイメージは黒髪ロングで黒い瞳ですかね。普段はタレ目だけど銃構えたらツリ目なる的な(!?) (2020年11月26日 13時) (レス) id: 0f6e4a6db1 (このIDを非表示/違反報告)
莉咲(プロフ) - すっごく面白いです!この作品を見つけたのは随分前なんですけど、それから何度読み返したか分かりません…!!こんな神作品をありがとうございました!! (2020年11月26日 12時) (レス) id: 0f6e4a6db1 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 了解です (2020年5月31日 18時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - 舞さん» 舞さん、最後まで読んでいただきありがとうございました!続編は今のところ考えてはおりません。申し訳ありません。でも、何かの形でこの物語を広げていけたらとは思っております! (2020年5月31日 12時) (レス) id: 6e8c5a7bd5 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - ゆいさん» 返信遅くなり申し訳ありません。楽しんでいただけたようで何よりです!ひとつお聞きしたいことがあるのですが、ゆいさんの中での主人公はどのような容姿をしていましたか?教えて下さると嬉しいです(*^^*) (2020年5月31日 12時) (レス) id: 6e8c5a7bd5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:暁月真愛 | 作成日時:2020年4月16日 12時