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リビングには既に二人の姿があった。
「ほら」
秀一が出してくれたのは、私の大好物のレモネード。
「覚えていてくれたんだ」
私はグラスを手にとってレモネードを飲む。どちらかというと甘みよりも酸味の強いこのレモネードは、疲れた私の身体に染み渡った。
「美味しい」
「お前は甘いレモネードより酸味の強い方が好きだろ。俺のお手製だ」
「そんな細かいとこまで…」
私は頬を緩める。
「さて、と」
秀一はソファに座ると、この街で暮らす上においての注意点を話し始めた。
「あと、これは主に光へ向けての注意なのだが。この街にある”ポアロ”という喫茶店には近づかない方が良い」
「何故だ?」
「あそこでは降谷くんが安室透という偽名を使って働いている。不用意に近づくと、君は全治一週間では済まない怪我を負わせられる羽目になるぞ」
「へぇ。あのゼロが喫茶店の店員…。さぞかし人気なんだろうな」
確かに、記憶の中のバーボンはかなりのハンサムだった。女性客はほっとかないだろう。
「俺は時々沖矢昴の姿でその喫茶店に通っているが、彼には嫌われているな」
「何で?」
私は素朴な疑問を秀一に投げかける。
「彼は、沖矢昴=赤井秀一と感づいているらしい。あいつは俺が光を殺したと思っているから、俺のことを恨んでいるんだ。”お互いNOCだったなら、助けられる道もあっただろうに”ってな」
「いやー、俺、生きてるんだけどねぇ」
光は面白そうに唇の端を上げる。
「…とまぁ、とりあえずそんな感じだ。なるべく一緒に行動したいとは思っているが、出来ない時もある。充分に注意して行動してくれ」
「はーい」
私は比較的緩めの返事をした。
「本当に分かったのか…」
秀一は苦笑する。
既に私の興味は、既にこの屋敷に沢山ある小説へと移り始めていた。
「凄い…。コナン・ドイルにエラリー・クイーン、ナイトバロンシリーズも!ありとあらゆる推理小説がある!!」
「そういやAはミステリー小説の大ファンだったな。好きなだけ読んで良いぞ」
その数時間後にこの屋敷の持ち主を知った私が、大きな声で叫ぶのはまた別の話。
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莉咲(プロフ) - 因みに私の夢主ちゃんのイメージは黒髪ロングで黒い瞳ですかね。普段はタレ目だけど銃構えたらツリ目なる的な(!?) (2020年11月26日 13時) (レス) id: 0f6e4a6db1 (このIDを非表示/違反報告)
莉咲(プロフ) - すっごく面白いです!この作品を見つけたのは随分前なんですけど、それから何度読み返したか分かりません…!!こんな神作品をありがとうございました!! (2020年11月26日 12時) (レス) id: 0f6e4a6db1 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 了解です (2020年5月31日 18時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - 舞さん» 舞さん、最後まで読んでいただきありがとうございました!続編は今のところ考えてはおりません。申し訳ありません。でも、何かの形でこの物語を広げていけたらとは思っております! (2020年5月31日 12時) (レス) id: 6e8c5a7bd5 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - ゆいさん» 返信遅くなり申し訳ありません。楽しんでいただけたようで何よりです!ひとつお聞きしたいことがあるのですが、ゆいさんの中での主人公はどのような容姿をしていましたか?教えて下さると嬉しいです(*^^*) (2020年5月31日 12時) (レス) id: 6e8c5a7bd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁月真愛 | 作成日時:2020年4月16日 12時