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私は視線を地面に落としたまま、ゆっくりと話し始めた。
「彼…陣平とは高校の同級生だったの。私ね、施設出身で。
今までそのことでいじめられたり、偏見を持たれたりしていたの。
でも、陣平と彼の親友、研二は私のことを受け入れてくれて、私達は大の親友になった。
彼らは当時から、“警察官になりたい”っていう夢を持ってたの。まぁ、あいつらのきっかけはかなりふざけた理由だったけどね。
私はそんな彼らに触発されて、同じ夢を抱くようになったの。
それで、高校2年の修学旅行で、陣平から告白されて。
…とっても嬉しかった。
私も彼のことを好きだったけど、正直、親友で良いって思ってたから。
それからは三人で同じ大学に進んで、法学を学んで。
警察学校に入って。
素敵な同期とも出会えた。
陣平と研二は手先が器用だったこともあって、スカウトされて爆発物処理班に入ったの。
勿論、危険な職場だから止めたわ。
でも、あいつらにはアクセルしかついてなかったの。止められるわけないじゃない。」
私は一気に話す。
赤井とは目を合わせず、視線は地面のままだ。
丁度いい距離感で横に立っている赤井の空気は微動だにしない。
私は続けた。
今度はLAの青い空に視線を上げる。
「そして私は縁あって、刑事課に配属された。
キツイ現場も多く経験したし、初めて死体を見た日なんて、泣いて陣平の元に駆け込んだ。
それでもやっていけたのは、やっぱり二人の支えが合ったから。
でもね…。研二が死んじゃうの。
解体中に突然タイマーが復活した爆弾に飲み込まれて。
私と陣平はどうしたら良いか分からなかった。
でも、後を追うことだけはしなかった。
犯人を逮捕する。
その執念が私達を生かさせた。
そして、研二の死から四年後。
チャンスが訪れるの。
犯人が現れたのよ。
私達は心を踊らせた。ようやく仇が取れる、って。
でも、犯人は私達をあざ笑うかのように、陣平を小さな監獄に引きずり込んだの。」
私は遠くに見える観覧車に目を向けた。
私の視線を追って、赤井も観覧車を見る。
サンタモニカピアのパシフィック・ウィールだ。
丸い、小さな、密室。監獄だ。
スッと言いしれぬ恐怖が私を襲う。
あれから、私は観覧車が怖くて仕方ない。
陣平の命が散った乗り物。
犯人を、一生、許さない。
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やっち(プロフ) - 終わりですか? (2022年6月25日 18時) (レス) @page43 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - ayaさん» ハマっただなんて…!嬉しすぎるお言葉です!!これからいよいよクライマックスに迫ってくるので、是非楽しんでくださると嬉しいです(*^^*) (2021年6月14日 7時) (レス) id: e1d6d9168c (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - はじめまして!とても面白いくてめちゃくちゃハマりました!松田さんはどんな気持ちで天国から見てるのか気になります、、(;_;) (2021年6月13日 21時) (レス) id: 4bc46bbce4 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - 紗那さん» まさかあんな3秒クオリティの前文で興味を持ってくださるとは…!嬉しい限りです!!テスト頑張ります…泣 (2021年5月23日 22時) (レス) id: ffc33c4c65 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - ふくろうさん» 先日もコメントをくださってありがとうございました!おあずけしちゃいましたね…笑 是非楽しみにしていてくださると嬉しいです! (2021年5月23日 22時) (レス) id: ffc33c4c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁月真愛 | 作成日時:2021年5月16日 17時