マリーゴールド【名探偵コナン】

38 ページ38

「この、男が…。」

私は血が出るほど、唇を強く噛み締めた。


今、私がいるのはとある歩道橋の上だ。

そう。犯人と対峙している。

「こいつが、陣平を、研二を…！！！！！」

犯人の顔は、何処にでもいそうなずる賢そうな顔をした男だった。

こんな男に、こんな男に…！！

全身の血が沸騰したように熱を帯び、私は復習の炎に包まれていた。

私は捜査員たちを掻き分け、犯人のもとに向かおうとする。

しかし、その一歩手前で。

「おい！！！」

目暮警部の叫び声がする。

急いで地面の方を見ると、犯人は何と歩道橋から飛び降り、逃走を図ったのだった。


「ちょ、ちょっと待て、片瀬くん？！？！」

怒りに狂った私を止められる人は誰もいなかった。

目暮警部の制止を振り切り、私も地面へと飛び降りた。

「おい、佐藤くん、高木くん！！急いで彼女を止めるんだ！！！」

そんな声を遠くで聞く。

私の視界には犯人しか映っていなかった。

私から研二を奪った犯人。

最愛の、陣平を奪った犯人。

今の今まで、のうのうと生きていた。

許せるわけがない。

こいつを、苦しませなくちゃ。絶対に。

遂に、私は犯人を行き止まりに追い詰めた。

私の怒りに満ちた表情に犯人は焦ったのか、ペラペラと語りだした。

「ほら、よくあるだろ？頭の中で子供の声がしたんだよ…。」

「警察を殺せ、って…い、いや、誰でも良いから殺せ、って…。そうさ、だから、俺のせいじゃないんだ…。」

その言葉に、私の中で辛うじて残っていた理性が崩れる音がした。

ずんずんと犯人に近づくと、その胸元を全力で絞め上げていた。

これでも元警察官だ。体力はもとい、握力だって、警察学校時代は、男女総合で上位の方に食い込んでいた。

犯人は苦しそうに呻く。しかし、私はそんなこともお構いなしに力を加え続けていた。

「そう…。」

私のドスの利いた低い声がする。

「貴方みたいな男に、陣平は…、私の大切な恋人は！！！死ななくちゃいけなかった！！！！

何で、なんでなの！？！？許さない、今度は私がお前を殺してやる、殺してやる…！！！」

ギリギリと締め上げる犯人の首が鳴る。



「やめてっ！！！」

突然、強い力で犯人から引き剥がされた。

その力の持ち主は。

「美和子…。」

「高木くんっ！犯人の容態を確認して！！」

美和子が指示を飛ばす。

「やだっ！！離して！！あの、男を、殺さなくちゃ…！！」

私は美和子に抵抗する。

ﾊﾟﾝｯ

軽い音が響いた。

39→←37

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す