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彼女は私のプロフィールを見ると、日本人だということに容易に気がついたようだ。
日本語が話せる捜査官を呼んできてくれるらしい。
私は生まれて初めて見るFBIにキョロキョロしっぱなしだった。
無理もない。絶対に関わることのないものだと思っていたからだ。
通されたのは取調室ではなく、まるでカフェの個室みたいな暖かな雰囲気の場所。
確かに、これなら取調室よりも緊張しなくてすみそうだ。”普通の人なら。”
元刑事の私にとって、取調室なんて寝床みたいなものだ。でも、こんな取り調べも悪くはない。
入ってきたのは、明らかにアジア系の顔をした長髪の男性だった。背は高くて比較的ガッシリしている。
どこかで見たような気もするのだが、多分気のせいだろう。
「FBI捜査官の赤井秀一だ。」
彼は私にFBIの手帳を示しながら無愛想に自己紹介をしてくれた。
「片瀬Aです。日本語教師をしています。」
そこからはまたまた怒涛の事情聴取タイム。
でも、英語では無かったから、日本語の細かいニュアンスを使って伝えられたのはかなり大きい。
一通りの質問が終わると、彼は調書から手を離し、私を見た。
「ミス片瀬。単刀直入に聞く。君の前職は??もうひとりの第一発見者である男は君がやけに冷静だったと証言している。」
私は肩をすくめた。
「日本にいた頃はしがない警察官をしていたのよ。一応、刑事課にいたから死体を見るのには耐性があるの。」
彼はなるほど、と納得したように頷く。
「じゃあ、何故アメリカに?」
「まぁ色々あってね。…それも犯人逮捕に必要かしら??」
私が少し挑発的に見つめると、彼は少し驚いたように目を開いた。
「いや。個人的な興味さ。」
結局、一ヶ月ほどをFBIロサンゼルス本部で過ごした。
学校には相当な迷惑をかけただろう。申し訳ない。
一ヶ月、FBIの人たちとコミュニケーションを取り、分かったことはいくつも合った。
彼らは非常に優秀で、そしてユーモアもある。
上司は日本と違ってお硬い頭でっかちだらけではなく、なかなかにフランクで柔軟性のある考えを持っている人が多い。流石は実力社会だ、というべきだろうか。
私は特に赤井との仲を深めていった。
お互い日本人だから、ということも大きいだろう。
一緒に時間を過ごすうちに私は彼のとあることに気がついてしまった。
そしてその事実は私の封印していた過去を思い出させる。
…そう。彼と、”彼”のタバコは一緒だったのだ。
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やっち(プロフ) - 終わりですか? (2022年6月25日 18時) (レス) @page43 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - ayaさん» ハマっただなんて…!嬉しすぎるお言葉です!!これからいよいよクライマックスに迫ってくるので、是非楽しんでくださると嬉しいです(*^^*) (2021年6月14日 7時) (レス) id: e1d6d9168c (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - はじめまして!とても面白いくてめちゃくちゃハマりました!松田さんはどんな気持ちで天国から見てるのか気になります、、(;_;) (2021年6月13日 21時) (レス) id: 4bc46bbce4 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - 紗那さん» まさかあんな3秒クオリティの前文で興味を持ってくださるとは…!嬉しい限りです!!テスト頑張ります…泣 (2021年5月23日 22時) (レス) id: ffc33c4c65 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - ふくろうさん» 先日もコメントをくださってありがとうございました!おあずけしちゃいましたね…笑 是非楽しみにしていてくださると嬉しいです! (2021年5月23日 22時) (レス) id: ffc33c4c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁月真愛 | 作成日時:2021年5月16日 17時