addict 3 (ページ5)

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開き掛けた心に閉まってモノの鍵を
引っ越す前の数日で完全に開けてしまった

あの頃に戻ったみたいな数日

必死に施錠しようとしてたのに

いとも簡単に開いてしまった

やっぱり翔太が好き

逃げる事しか考えてなかったあの頃とは違う

ちゃんと伝えて、砕けよう。
でも、伝えるのは出て行ってから

翔太に気まずい思いさせたくない。

って思いと、フラれる恐怖もあって
キッチンに隠した。

離れて分かる翔太の存在。
テレビに映る翔太は元気そうだけど
ちゃんと食べてんのかな？
疲れてないかなー

想いに反して自分からは連絡できずにいて
時折来る翔太からの連絡を返す

そんなある日
翔太からの突然の電話

「手紙だよ！」って言われて
ドキっとした

読んだんだ

「やっと作る気になったの？」って
笑って誤魔化した

でも、誤魔化しは通用しかなかったみたいで...

電話越しで大声で喋る翔太の口から発せられたのは
「好き」って言葉だった

脳内で理解が追いつかず言葉が出ない

「なぁ...」
「ご、ごめん...」
「なんで謝んの」
「パニックで言葉、出なくて...」
「好きって言ったのお前からじゃん」
「そ、そうだけど...」
「もっとわかる所に置けよ」
「フラれるの嫌だったから、隠した」
「やっぱお前はバカだな笑」

「俺は今も好きなんだけど？お前はどーなんだよ」
「私も、好き」
「...」
「な、何か言ってよ...」
「ニヤケすぎて喋れん」
「何それ笑」

「はぁ～！もう何年越しだよ、ほんと。
お前が逃げるから」
「それは謝ったじゃん」
「つーか、引っ越した意味ねーじゃん笑」
「え？」
「好き同士って事は付き合うだろ？俺たち」
「え、あ、よろしくお願いします...」

何十年越しに想いが通じあった私たち

あの時逃げなかったら
もっと早くこうなってたかもしれない

でも
どんどんかっこよくなって人気者になっていく翔太を
あの頃の若い自分は受け入れられたのかな

「お前がどこに居ても見てもらえるように
必死だったからな。必死に頑張ったから
今の俺があるから。
その分ではお前に感謝だな」

なんてありがたいお言葉まで頂いて
逃げた事は無駄じゃなかったって思えるようになった

それから、鍵の開いた感情は放出される一方で

「翔太、好きだよ」
「分かった、分かった」と
軽くあしらわれてしまうけど
会えた日は甘やかしてくれて
また補充されていく

愛でいっぱいになって閉まることはなくて
一生蓋をすることもない。

鍵はもういらないな。

END