迷ヰ犬達ノ紡グ物語

File9:呆然(ちょこれーと工場) ページ9

私、今泉千月は、普段ちょっとやそっとで驚かない。

母さんが死んだときもそうだった。
首吊り状態になってる光景は初め見たときこそ驚いたけど、何だか納得できたのだ。

嗚呼、矢っ張り。

そう思った。まあ、それでもあの悪夢を忘れる自信はないけど。


……驚かないのだ、普段は。

「ごめんね心傘ぁあぁああぁぁぁ!!!」

そう云うって恩人がヴァニッシュ・マフィアの首領に飛びついている。

否、驚かないわけがないだろ。え、驚くよね普通の人間は。

うん。で、更に疑問はたくさんあるんだけど。


まず、社長、副社長、と来て何故か調査員の私。このメンツに。
みかさ、と聞いて目を輝かせた副社長、陽菜さんに。
ヴァニッシュ・マフィアの首領、月観射心傘と会ったことに。
ヴァニッシュ・マフィアの副首領であろう名月千代と会ったことに。

そして、何より、

「ああああああああああ！今引いたぁぁぁ?!」

「引いているお姿もお美しいぃぃぃぃ!!!」

社長と敵対組織の副首領の言動に。


……傍から見て呆然としてると思う、私。

その二人を見るあちら側の首領の顔は引き攣っている。

へえ、意外とこういうのには引く常人なんだ？
頭の隅でどうでもいいことを考える。

……で、此処に来た目的は？

密会に、何で私が？

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