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じっと見すぎていたのかもしれない。
望は視線を感じたのか私の方を見た。
「(うわ！こっち見た！)」
慌てて一度目をそらしてしまうが、何を意識してるんだろうか、と冷静になり、また望の方を見る。
“見・ん・な”
望の口がそう動いたのが見え、私もムッとする。ルーズリーフに『自意識過剰！』と殴り書き、それを丸めると、望の方へと投げ放った。
紙を広げて読んだ望は、何やら書き込む。
「小瀧ー、何コソコソしてんねん」
担任はタイミングよく望の動きを指摘。私はこみ上げる笑いを抑えようと、慌てて口を手で覆った。
「いや、先生の大事な授業、一言ももらさへんようにメモをとろうとしてて…」
「小瀧、今は問5を考える時間や」
「ですよねー！今余弦定理を…」
「関数な」
「そう！関数！」
「……まあええわ」
呆れた担任が黒板を向くとすぐに私を見る望。声を殺す私に、怒った表情を見せた。
私はそれさえも面白く、肩を震わせるしかできなかった。
「あの、Aさん」
昼休み。購買でパンを選んでいると、名前を呼ばれた気がして振り向いた。そこには、私よりも小柄で華奢な女子生徒が立っていた。
丁寧に巻かれた髪と、大きな瞳、プルプルの唇。女子力の高さを突きつけているような気がする。
「Aさんって、小瀧くんと付き合ってるんですか？」
「え？」
「毎日登下校が一緒やし、仲よさそうに横にいるから」
唐突に何を聞かれるのかと思えば。
私は周りから見ればそういう風に見えるってことか。
「いや、付き合ってないです」
「ほんまに？……よかった！」
その女の子は嬉しそうにパッと笑顔になった。望の人気を改めて感じる。
“小瀧が誰かと付き合ったらどうすんの？”
菜々の声がまたリフレインする。
そんなこと考えたこともなかった。
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作成日時：2019年2月25日 12時
