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Pastー
朝から通学路を全速力で走る。
「Aやばい！遅刻や！」
「望がお弁当忘れたからやん！取りに戻らへんかったら間に合ってたし！」
「はいはい、分かった分かった」
「なんで私がなだめられてんの？」
蝉の音がうるさい、まだ若かりし高1の夏だった。
「あっつぅ！」
「間に合った…」
息を切らし飛び込んだ教室。まだ騒ついた教室に安心し、カッターにパタパタと空気を入れた。
望は汗をかきながらも余裕そうな表情。私より体力あるくせに、ペースを合わせて走っていたんだと実感する。
「また小瀧と仲良し通学？」
クラスの中でも仲のいい菜々が、私の机に駆け寄ってきた。望は、あっという間に男子の群れの中心で、騒いでいる。
「そんなんちゃうってば」
仲良し通学と馬鹿にされた言い方には、思春期の私には恥ずかしさと意地とプライドで、軽く受け流すことができなかった。
「でも小瀧みたいなイケメンの幼馴染がいるん、ちょっと羨ましいかも」
「イケメンか？」
「イケメンやん！こないだも4組の子に告白されてたらしいで？」
「え、そうなん」
「A、小瀧が誰かと付き合ったらどうすんの？」
菜々は私が望の人気を知らない事に驚いていた。何年も一緒にいて、初めて望の浮いた話を聞いたような気がする。そうか、望はモテるのか。
チャイムが鳴ると同時に、担任が教室に入って来る。生徒たちは音立てて自分の席に着いた。私もぼーっとしながらも数学の教科書を出す。
「(望はその告白になんて返事したんかな)」
担任の声よりも菜々の言葉が頭から離れない。
少し離れた席に座る、望の横顔を眺める。筋の通った鼻、透き通った瞳、凛とした表情。
近くにいすぎてよく分かっていなかったけど、間違いなく容姿は整っている。
「(んー、確かにイケメンかも)」
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作成日時：2019年2月25日 12時
