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「元気元気。ほんま久しぶりやなぁ。高校ぶりくらい？」
「こんなとこで会うって、めっちゃ偶然」
空白の時間が嘘のように会話が続く。あの頃のように話しているのに、お互いスーツを着てお酒を飲んでいるのがおかしいくて、笑ってしまう。
「望のスーツ変な感じするわ」
「Aの標準語もまあまあ痒かったで」
「だいぶ馴染んでたやろ」
望は私の飲みさしの生ビールを飲んだ。もう飲まなくていいと言われているようで、少し安心する。
「俺去年まで関西支社で勤務しててん」
「そうなん？」
「異動の辞令があって、配属がこっちになったんやけど」
「本社に移ったてことは、期待されてるってことなんちゃう？」
「どうかなぁ〜」
望と仕事。不思議な感じしかない。なのに、空気はまるで幼かったあの頃のようで、心底嬉しくなった。
こんな風に感じるのは、もう二度と、望とあの頃のように話せる時は来ないと思っていたからなんだろうな。
「すみません、ラストオーダーになります！」
幹事の声が大部屋に響き、宴会の終了が知らされる。二次会に行く話が云々されている中、私は睡魔との戦いに必死になっていた。
残業後のアルコールの過剰摂取。体は完全に疲れ切っている。どう考えても二次会には行けそうにない。
「佐々木先輩しっかりしてください」
「うーーん」
望は店の前に何台も止まるタクシーの１つに、佐々木さんを無理矢理押し込んだ。運転手に行き先を伝えると、お疲れ様でした、と告げドアを閉めた。
我が社の上司たちはというと、取引先の専務と仲良く二次会に向かうタクシーに乗り込んでいた。その他にも、飲み足りない、はしゃぎ足りない社員たちは、続くようにぞろぞろとタクシーに乗り、賑やかな街へと車を走らせていった。
そんな私は、元気だなぁと思いながらも、しっかりと見送る。
「ふぅ…」
店先の階段に座り込んでしまう私に、望が駆け寄った。
「お疲れ、大丈夫？」
「大丈夫ちゃうし」
「今タクシーまた呼ぶし、送るわ」
「んー…」
望はすぐにタクシー会社に電話をかけた。その後ろ姿をぼんやり眺め、望ってこんなに大きかったかな、なんて重くなる瞼の裏で、昔の望と重ねていた。
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作成日時：2019年2月25日 12時
