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我ながら迫真だったと思う。ただ嘘の演技だと思うと何度も笑いそうになった。
「ふふっ」
思わず声が漏れた。
イタズラに成功した時の望の気持ちが、今ならよくわかる気がする。
仕事用の携帯が鳴っているのに気づき、足を止めた。画面には“小瀧望”の文字。
「もしもし」
『A？今どこ？』
「もうすぐ駅」
『俺も今抜けれたし、駅で待ち合わせしよ』
電話しながらも、口元が緩むのを感じる。こみ上げる笑いを抑えきれない。
すれ違う人はきっと、私のことを変な目で見ているんだろうな。
駅についてからしばらくすると、人混みの中から望の姿が見えた。身長が高いせいか、いつも見つけやすく助かる。
「めっちゃおもろかったな！」
開口一番、望は嬉しそうに笑った。その言葉で、さっきの情景をまた思い浮かべる。
「みんな焦った顔してたなー」
「いやほんま！何回も笑ってまいそうやったわ」
喧嘩をした勢いでその場を離れる作戦は、望の発案だった。相手に少し悪い印象を与えれば、しつこい関わりも少し減るだろう、という狙いもあるらしい。
作戦に乗ったのは、この状況を打破したいのと、お酒の勢いだった。
「飲み直ししよ」
望はそう言うと、オススメの店があるから、と私を駅裏の路地へ案内してくれる。小さなバーが見えると、ウッド調のドアが私を出迎えた。
「おしゃれ」
「やろ？俺の行きつけ」
中に入り、カウンターに座る。落とされた照明の中、鳴り響くジャズが落ち着いた雰囲気を出していた。
「乾杯しよ」
ロックグラスをぶつけると、中の氷が音を立てた。
「今日の合コン、仕組まれてるって知ってた？」
切り出したのは望だった。
私は何の話か理解できず、眉間にしわを寄せる。
「田中が愛美ちゃんと仲良くなって、俺との合コンをセッティングして欲しいって頼まれたらしいねん」
「愛美ちゃん本気やな…」
「俺も最初断ってんけど、今度は佐々木さんが田中に、Aが来るように頼んでるんが聞こえてきて、」
「え、そうやったん？」
私はナッツを口に入れては、グラスに口をつけてちびちび飲む。
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作成日時：2019年2月25日 12時
