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『今日夕方、そっちの会社行くしそん時渡すわ』
「分かった。あ、私の仕事用のスマホの番号言うし、そっちに連絡してくれる？」
『りょーかい、りょーかい』
少しやり取りをして電話を切る。それからそっと沙希にスマホを返した。
「A？」
沙希の第一声に身が震える。
「小瀧さんって飲み会にいた人だよね？何でそんな親しく喋ってんの？しかもAのスマホ、その人の家に忘れたらしいけど、体位まで詳しく話してくれるかしら？」
顔は笑ってるのに目が笑っていない。
「体位って、何もしてないから」
「男と女が１つ屋根の下にいて何もないわけないでしょ！」
沙希の怒りが爆発する前に、一通りの流れを話そう。そう判断し、望との関係や金曜の出来事をサラッと説明した。
「何それ、そんな人がAにいたなんて聞いたことないんだけど」
「いや、言ってないからなんだけど」
「もうちょっと詳しく！」
「もう朝礼はじまるよ」
早めに出勤したのに、あっという間に始業の時間になっていた。周りには続々と出勤する社員が増えてきている。
ぶーっと口を尖らせた沙希は、ふてくされた様子で自分のオフィスの方へ向かっていった。
「(朝からなんか疲れた…)」
はぁ、と息を漏らし自分のデスクに着いた。スマホ探しで荒れた書類を１つずつ丁寧に片付ける。
「Aー、おはよう」
声をかけてきたのは、真後ろのデスクに座る先輩の濱田さんだった。
入社したての頃、濱田さんが私の教育係だった事からよく可愛がってもらい、教育が外れた今でも気にかけてくれてはご飯に誘ってくれる、気さくで優しい先輩だ。
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作成日時：2019年2月25日 12時
