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20:30ー
「ここか…」
沙希から送られてきた位置情報を頼りに、懇親会の会場に何とかたどり着いた。
途中から入るのは気がひける。出来上がった空気に馴染めるのか、盛り上がった話題に乗れるのか、酔っ払いにテンションが合わせられるのか。
そんな思いとは裏腹に沙希から催促のLINEが入った。
ふぅーと息を吐き、意を決して店内に足を入れる。
「お疲れ様でーす」
「ちょっとA、遅いよ！」
沙希はすぐ私に気づき、隣に座らせた。
座る場所があってよかった。というか、友達がいてよかった。
「すごい盛り上がってるね」
「でしょ。なんか向こうの企業もみんないい人で、無礼講だとか言って部長も課長もすごい楽しんでるよ」
居酒屋の大部屋にざっと50人ほどの大人が、笑ったり飲んだり料理をつついたりと、大賑わい。
誰がうちの社員で、誰が取引先の社員か分からないくらいのどんちゃん騒ぎに少し驚いた。店員さんも忙しそうに出入りをしては、グラスを取り替えドリンクをせっせと運んでいる。
そんな風景の中、一際女性が多いテーブルが目立っていた。
「あのテーブル女の子ばっかだね」
「あー、言ってたイケメンがあのテーブルに固まってたみたい」
キャッキャと盛り上がるそのテーブルに、頬を赤らめ、嬉しそうに男性と話す愛美ちゃんが座っているのが、遠目からでも確認できた。
「例の愛美ちゃん、スタートの19時からいたよ」
沙希が信じられないというような表情で言った。
私は苦笑いをしながら、目の前の皿にあった枝豆を摘む。
「懇親会に行きたそうに時間気にしてたから、先に帰らせたの」
「何それ。残業はあの子のミスでしょ？」
「まあねー」
「信じらんない」
私は空いた食器を下げに来た店員さんに、ハイボールを頼んだ。
合同プロジェクトのための懇親会とはいえ、ここまで大所帯になれば、仲のいい同僚とこじんまり仕事の愚痴になっても仕方がないか。
沙希とは同期で入社し、3年間同じ部署で勤務している。所属の課は違うけど、フロアが同じだったため、用事があれば顔を合わせ、気がつけば仲良くなっていた。
この3年で辞めたいと思う業務も、投げ出したいと思う企画も、何とか乗り越えやってこれたのは、沙希がいたから。上京して友達がいなかった私は、何度沙希に救われて来たか。
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作成日時：2019年2月25日 12時
