(6):百聞は一見に如かずは詭弁 ページ27
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「オッハー! どう? 元気してる?」
ノックも無しにばぁん! と豪快に開いた自室の扉の前で立つノッポは普通の顔をして入ってきた。
そんな今の時刻は夜の十時。乙女の部屋に平然と訪れていい時刻ではない。なんなら『おやすみ』の時間である。
しかしズカズカと無遠慮に入り、壊れた扉の蝶番を拾い手で遊びながら勝手に部屋を物色し始めるノッポ君。もう少し丁寧に入ってこられなかったものか。開けただけで扉の蝶番が壊れるなんて聞いたことねーよ。どんだけ力強ぇんだ。
それに、昨日私のファーストチッスを奪っておいて飄々としていられる神経も分からん。私のバージンキスだと知らぬことが前提にあるにしても、その態度は絶対におかしい。
眠眼で回らない頭でもツッコミどころがここまで見つかる男は稀に見る希少種だと私は思う。
「え、何その顔。まだ無理? 動けないの? ったく仕方ねぇ甘えん坊だな、ほらおいで」
「おいでの意味が分かりません」
「ぎゅーしてやるよ。やる気出るっしょ?」
「別に出ませんけど」
「あーいい、いい。強がりとかいいよ別に。昨日だってキスしたお陰でやる気出たでしょ? いい飴だったでしょ? ほらおいで」
「しないってんだよバカヤロウ!」
個人的には鞭に鞭食らった気分だよバカヤロウ!
「アドレナリン出るだろ」とこれまたもっともらしい物言いをした彼の言うことは確かにもっともだ。
キスをされたという憤慨でなかなか寝れなかった上に、疲れなんて更々忘れた事を踏まえれば、アドレナリン効果があったと自信を持って言える。
ただ、やり方が他になかったのかともう耳にタコが出来るほど言っているはずなんだが。
「うん、そんだけ元気ならもう大丈夫そうだな。さ、行くぞ子羊よ」
だからなんなんだよそれは。子羊って言うな。
「……まさかまた任務じゃないでしょうね」
「また俺と行きてぇの? でも残念。今日は違いマース」
残念も何も歓喜に溢れてるよこっちは。
「じゃあ何するの」
「言ったじゃん。本題だよ」
そう言って、ノッポ五条はニヤリと笑った。
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作者名:優 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時:2021年3月11日 18時