月光の前奏曲 -第4番- (ページ7)

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１７…side:Keigo.A ページ7

☪*｡꙳

　今までも女に対して恋心を抱くことはあった。

ただの情だったのか、本当に恋心だったのか最早今となっては思い出せもしないが、抱いた女に尽くしてやりてぇと思うことは少なからずあった。

　それでも、そいつが自分から離れていくことを怖いだなんて思ったことは今の一度もなかったのだ。

離れていったとしても、また新しい女を見つけりゃいいだけの話だと思いつつも先に飽きて離れるのは結局のところ俺で。

　それなのに、俺は彼女を自分から手放そうとしないどころか、失うのがこの上なく恐ろしくて嫌だと思っている。

　なら、彼女に抱くこの感情はただの恋心ではない。

きっとこれは恋心を超えた先にある、未だ抱いたことも感じたことも無いもの。――これがきっと、愛だ。

　俺は、彼女をただ好きなのではない。どうしようもなく、愛しているのだ。

まさか、自分が人を愛す時が来るとは、この俺ですら予想してなかった。

愛されることがあれども、全然伝わってこないそれに自己の承認欲求を満たすだけのそんな薄っぺらいもんなら俺は要らねぇと、俺には必要ねぇと思っていたのに。

　あーあ、なんでこうなっちまったかな。

本当、こんなあほ面して寝てやがる女のどこがいいんだか。自分でも皆目見当もつかねぇよ。

馬鹿な女だとは常々思っていたが、そんな女に愛を覚えた俺はその上を行く馬鹿で間違いない。

　たかだか一年、一緒にいただけでこれだ。

たった一年でこんなになったってんなら、この先もこいつと一緒にいたら、一体どうなっちまうんだろうな俺は。

　確かめたい。それを、自分の目で見届けたい。

世間が騒ぎたてて止まない、愛というものが、どんなものなのか。そして愛を知った先に、何が見えるのか。

　絶対、見つけてやる。こうなったら意地でも知り尽してやる。

この俺をここまでさせやがったんだ。

その責任は、しっかりとってもらうぜ。とことん付き合えよ、じゃじゃ馬姫さんよ。

　勝手に道連れにされたことなんて露知らず。俺の方に寝返りを打った彼女に身を寄せ、その体を抱き寄せて目を瞑る。

いつもより一層その甘い香りを感じて、また満たされていく愛の余韻に浸りながら夜を後にした。