月光の前奏曲 -第4番- (ページ49)

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１１…side:You ページ49

「お前、今の、」

『……私の美技に酔いました？部長様』

「……こりゃ驚いた。
まさか、A先輩が、
越前のドライブを打てるなんて知らなかったぜ」

　そう。私が打ったのは越前君のドライブB。

前に上がってくる彼を嘲笑うかのように頭上を通り過ぎたボールは、
コロコロとコートの後ろに転がっていった。

　何を隠そう、あれは私の十八番だ。

初めて越前君のアレを見た時は、おぉ。同志。と思ったものだ。

マネージャーとなった今あれ私も打てるよ！だなんて
言う意味もないから今の今まで言わなかったが。

まぁ、私があれを打てると知らなかったから
通用しただけのことであってそれが跡部にバレてしまった今、
もう次は返されんだろうけど。

　桃城君の呟きで飽き飽きしていた神尾君達がまた
コート脇を彩れば、跡部様の闘志に火をつけてしまったらしく
ばちくそにやり返されたのは言うまでもなく。

　もうこれ以上やっても私にはもう奥の手なんかねぇよ無理無理と、
颯爽とベンチに戻った私は部長様の舌打ちを食らいながらも
神尾君がお疲れ様と買ってきてくれた
グレープのアイスキャンディを口に咥えていれば
隣に座る跡部から熱い視線を感じた。

『……なに？やっぱりアンタも食べたいの？
さっきは要らないっていったじゃん』

「違ぇ」

『じゃあなんなのよ。
そんな穴あきそうな程見てる理由なんてそれしかないでしょうに。
欲しいなら欲しいって言えばいいじゃん別に。誰も咎めないよ』

「だから違ぇって言ってんだろ」

『じゃあ見んなや』

　ふいと顔を背けた私を見た跡部は何を思ったか
突然立ち上がってどこかへスタスタ歩いていった。