月光の前奏曲 -第4番- (ページ3)

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１３…side:Keigo.A ページ3

☪*｡꙳

　忍足に持っていたビニール袋を押し付けて走り出す。

宍戸と忍足の声が背後から聞こえるが、最早そんなの俺の耳には届いて居なかった。

　声が聞こえた方へ最短距離を突っ切る為、目に入ったガードレールを飛び超え雑木林の中を走り抜ける。

途中頬を木の枝が掠めピリッとした痛みを感じるも、先程の首筋の痛みに比べれば比にならないそれを無視して雑木林を抜ければ、宿舎の中庭についた。

　辺りを見渡している中、視線を向けた先にフラフラと月下を歩く一人の男が見えた。――あれは、亜久津か？

　否、正直今は誰だっていい。

彼女のことを見なかったかと聞こうと止めた足を動かせば、俺の足音に気づいた亜久津がゆらっと影を揺らしながら振り向いた。

　その腕に横抱きにされた彼女は、まさに俺が探していた人物で。

俺と相反する色を持つ月光に照らされた燃えるような赤い瞳を睨みつけると、亜久津は表情ひとつ変えないどころかあっけらかんとして口を開いた。

「何睨んでんだ、跡部」

「亜久津テメェ……Aに何しやがった」

　自分でも驚くほどのドスの効いた声に、微塵も動揺しない亜久津はやたらとデカいため息をついた。

かと思えば、亜久津は顔を顰めながらその眼光を鋭く尖らせ俺を睨みつける。

「別に俺はなんもしてねえよ。勝手にこいつが気失っただけだ」

「はぁ？しらばっくれんじゃねぇよ。なら、今の悲鳴はなんなんだ」

「……知らねぇよ」

　一瞬の間を置いて明らかに嘘をついたこいつは、何を考えているのかその表情からは全く読めない。

ただ、知らぬ存ぜぬを突き通そうとする亜久津が何かを隠していることは分かる。

部屋に連れ込もうとかそういう魂胆か？だがこいつは相部屋なはずだ。なら、山吹全員グルってことか？

　千石は有り得るにしても、あの南や東方がそんなことをするとも思えない。

一体何考えてやがんだこの男。