月光の前奏曲 -第4番- (ページ20)

今日:5 hit、昨日:21 hit、合計:29,844 hit

第九章【ライアーゲームじゃ始まらない】side:You ページ20

☪*｡꙳

　合同合宿最終日。

エキシビジョンマッチで未だ対戦していなかった山吹と消化試合をした後、片付けをしていればふと視線をあげた先にふらふらと中庭を歩いている亜久津さんが見えた。

　昨日気を失った後、あれからどうしたのか未だ知らない私は、彼なら何か知ってるかなと彼の方へ歩みを進めていく。

近づいていくにつれ、私の姿に気づいたであろう亜久津さんと目が合って、彼の名前を呼ぼうとしたその瞬間、グイッと強く肩を引かれて数歩後ろに足をもつれさせた。

　え？なに？何事？

顔を上げ見えたのは、嘘が嫌いな癖に今朝嘘ばっかつきやがった跡部で。

　なに、どうしたの。

そう問いかけようとした刹那、彼が信じられないくらい冷たい瞳で亜久津さんを睨んでいて思わず口を噤んだ。

睨まれている亜久津さんと言えば、彼と同じくらい冷たい瞳で睨み返している。

睨み合う二人の間にあるのは、単純な敵対心ではない。ここに見えるのは、嫌悪と憎悪。

跡部の憎悪の青い瞳と、亜久津さんの嫌悪の赤い瞳が混じりあって、火花どころかどす黒い何かが生まれている気がする。

　なに、なんなのこの二人。一体いつの間に仲違いしたのよアンタ達。

　否、仲違いなんて可愛いものじゃないかもしれない。

どちらかが手を出せば殺し合いに発展しそうなくらいピリつく空気に、いい加減耐えかねて噤んでいた口を開いた。