６…side:You ページ13
☪*｡꙳
目を開けて真顔で私を見据えた彼が、彼の目が、どうしても嘘をついているように見えなくて唖然とした。
え、私、本当に、跡部と、キス、したの？
嘘。そんな。いつ？ 私が気を失ってる間にってこと？
そんな、馬鹿な。
だとしたらなんでこいつは私なんかにキスしたのだろうか。何を思って、何の為に。
思わず彼の首から手を離して唇を抑えた。彼の顔が見られなくて、視線を泳がせながら思った。
……ん、待てよ。
そうだ。そうだよ。する訳ないじゃんこいつが。またからかってやろうって魂胆か！ 危ねー、また騙されるところだった！！
くっそ！ そう何度も私だって引っかからないぞ！！ どこまでも人をバカにしやがって！
泳がせていた視線を彼に戻してキッと睨めば、彼はやはり楽しそうに笑っていた。
「もう騙されないって言ってるでしょ！ やめてよねそうやってからかって遊ぶの！ 私はアンタのおもちゃじゃないんだからね！！」
「別に俺はお前のこと玩具だなんて思ってねぇよ」
「明らか思ってるでしょうが！！ じゃあなに！？ 操り人形！？ それとも下僕かこら！！」
「知りたいか？」
「や、いい。どうせろくな答えじゃないから」
「好きな人」
「いやいや、いいって言ったじゃん……って、え？」
「だから、俺の好きな人」
「……誰が？」
「お前が。もっと言うなら、お前は、俺にとって大事な人」
「え……」
「……ふっ」
「……えっ、あっ！ もう！ またからかったなこの野郎！！」
流石に我慢の限界だと彼の首をくっと軽く絞めてやれば、やめろばか、と口では否定して見せるものの笑っている彼は、本当にどこまでもムカつく男。嫌な奴。本当に癪に障る。最低極まりない。
なのに。何故か嫌いには戻れない。
それどころか、この時間が少しだけ。少しだけ楽しいなだなんて思っている自分はマゾなのだろうか。
そんな訳あるまい。
ムカつくことにはムカついているし、一回殺してやりたいという気持ちに嘘偽りはない。
なら、なんで。なんで私は彼から離れようとしないのだろうか。
自分の部屋にさっさと帰ればいいのに。それをしないのは、なんで、だろうか。
もしかして、私、跡部のこと――
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作者名：2ytluvuusham081 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時：2020年10月19日 0時
