脳漿炸裂ボーイ【跡部 景吾】

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しかし、足の速さで彼に勝てる訳もなく。






全力で走る私の横に並ぶように追いついてきた彼は

ジョギングでもしているかのように息ひとつ切らさず余裕に笑った。






かと思えば、「校内ランニングか」と

見当違いな言葉を掛けてきた彼もとい

跡部先輩はそのまま話を続けてくる。






「わざわざこんなところで走るなんて物好きな奴だな。

ランニングがしたいならうちのトレーニングルーム使えばいいのによ」






「ちっがいますよ！！ したくてしてる訳じゃないです！！

跡部先輩から逃げてるんですよ私は！！」






「どこに逃げる必要があるんだ。

あぁ、あれか。ったく、いつになったら

その照れ癖治るんだ？ お前は」






「だから違いますってば！！

も、ついてこないでください……っ！！」






「そんなんで息切らして、体力ねえなぁ。

特別に俺様直々に鍛えてやろうか？ アーン？」






「余計なお世話です！！

っていうかなんで、ついてくるんですかもう！！

用ないなら、どっか、行ってください！！」






「お前こそ何故逃げる。何か疚しいことでもあるのか？

まさか浮気でもしてるんじゃねえだろうな」






〜っ、この馬鹿男が！ 何が浮気だ！






付き合ってもないんだから浮気も何もないっての！






もうこの際お望み通り私が好きなのはあんたの後輩鳳くんなんだと

公言してしまおうかとすら思ってしまう。






まぁそんなことすれば鳳くんにとばっちりがいくことは

免れないだろうから言えるわけもないんだけども。






もういい加減体力も限界だとキュッと室内履きを鳴らしながら

急なる方向転換をして階段を駆け上がった。






最上階である屋上を目指して全速力で走る。






私の突然の方向転換に行き過ぎた体を戻した跡部先輩は

乱れた髪を整えながら余裕綽々に歩いて階段を登ってくる。






彼的には追い詰めたと思った故の余裕なんだろうが、

私とてそこまで馬鹿ではない。






屋上に繋がる扉を勢いよく開けて、

裏手にあるエアコンの室外機に足を掛けた。






壁のヘリに手をかけて女子らしからぬ無様さで塔屋によじ登る。






この場所こそ、最近見つけた私の至上の隠れ家だ。






流石にここは見つかるまいと塔屋のコンクリートに寝そべって

屋上に上がってきた彼をやり過ごす。






ふっふっふっ。






思わず漏れそうになる笑い声を必死に抑え、

辺りを見渡しながら私を探す彼を見つめていれば。






「……あれ、ここで何してるの〜？」

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