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✩.*˚
「キスしたら、行ってくれますか?」
能面のような顔に似つかわしく無い言葉。
驚きなのか、起き抜けで頭が働かないせいなのか。
言葉を失ってしまった俺の返事を待つ彼女の瞳は
少しうるんで瞬きが多くなった気がする。
逆に乾いていくのは大きく開ききってしまった俺の瞳。
ただ、彼女の言葉の真意がわからない以上
黙って言う通りにしてやるのも癪だ。
お前の思い通りになんて、なってやらねぇよ。
「いーや? もういい。
別にお前とキスしたところで俺に何の得もないしな」
「……まぁそうですよね、
あの跡部様とキスなんて簡単にできるわけが無いですもんね。
ちぇ、しくったぜもう」
「……しくった?」
「えぇ。実は、少し後悔してたんです。
俺にキスしろって言われた時、
ちゃんとしておけばよかったなって。
二度とないチャンスだったかもしれないのにって。
だからちょっと期待したんですけど」
「やっぱダメかー」と間延びした声で言う彼女は
本当に何を考えているのかが全く分からない。
表情が読めない、というのはもちろん
言うことがその都度変わる彼女に思考がついていかない。
本当に何がしたいんだ、この女。
俺様を突き放しておいて、
何故自分は歩み寄ろうとしてくるんだ。
俺に、どうして欲しいんだ。
「……お前、俺の事、好きなのか」
「え?」
「俺様に惚れてんのかって聞いてんだ」
「なんでそんなこと、聞きたいんです?」
「なんでもくそもねぇよ。
今聞いてるのは俺だろ。質問に答えな」
「まぁそうですね。もしかしたら惚れてるのかもしれないです」
「……ハッ、なんだ。
まだ1週間も経ってねぇってのに、
結局お前もその辺の女と変わらねぇのか」
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作者名:2ytluvuusham081 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時:2020年11月22日 11時