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✩.*˚
少しも解放されないそれを背負ったまま部活が終わる。
迎えを待つ間、ふと思い出した彼女の名を声に出した。
呼べば来るんだろ。なら、さっさと来いよ。
早く俺にやり返しさせろよ。
自分でも意味のわからない理由だと思う。
それなのに、「お呼びですか」と涼しい顔で現れた彼女は
俺の感情なんてひとつも感じ取ろうとしない。
ムカつく。何もかも腹が立つ。
「キス、しろよ」
無闇に放られた言葉にも無表情を崩さない彼女に
苛立ちが降り止まない。
「はい?」
「俺にキスしろ」
「いや、急に何を言い出すんです。しませんよキスなんて。
私をデリヘル嬢かなんかと勘違いしてません貴方」
「してねぇよそんなの。
朝したんだから、今も出来んだろうよ」
「あれは雌猫でしたからね。
雌猫さんならああするかと思いまして」
「じゃあ、今のお前は一体なんなんだ」
「分かりきったこと聞かないでくださいよ。
ほら、くだらないこと言ってないでもう帰りますよ」
「お前が俺にキスするまでは帰らねぇよ」
「だからしませんってば。
今日のディナーは景吾様が
好きなローストビーフだそうですよ」
「ハッ、そんなディナーごときで
俺様が釣られるとでも思ったか」
「流石は景吾様。私なら簡単に釣れますけどねぇ」
「なら、最高級のポテトチップスを
用意してやろうじゃねーの。
それなら釣れるんだろ、お前は」
「……うす塩ですかそれ」
「いや、味かよ気にするのは。
普通そこじゃねぇだろ。最高級に惹かれろよ」
「高級だろうがなんだろうが
うす塩じゃないなら私はいりません。
その辺の安っちぃポテトチップスで十分です」
「じゃあ俺にキスしたらそれを腐るほど買ってやる」
「いいでしょう。交渉成立です」
思いのほか簡単に釣り上げられた彼女は
俺の思惑なんて気づきもしない。
やり返してやりたいだけの、
振り回してやりたいだけの、俺の思惑なんて。
目、瞑ってください。
彼女の言葉に従う。
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作者名:2ytluvuusham081 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時:2020年11月22日 11時