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✩.*˚
「おん。彼女の名前。なんやようわからんけど家庭の事情で
上の苗字は明かせんいうて、下の名前しか知らんねんけどな」
その名前を聞いて、こめかみに手を添えた。
家庭の事情ってなんだ?
そんな怪しさ満点の女がよくうちに入学出来たな。
いやまぁそれはいいとしても。
どこかで聞き覚えのある名前だ。
どこで聞きたかと浮かせていた視線を彼女に合わせた瞬間、
カチッと何かがハマった音がした。
「お前……!!」
「え? なに? どした跡部??」
硬直して動かなくなった俺の眼前で
手を振る忍足の向こうに見える彼女は
どう見てもアイツとは似ても似つかないのに。
先程まで赤らめていた顔を無表情に戻したのと同時に
疑惑が確信に変わる。
ふと忍足が彼女の方へ振り向いた瞬間、
無表情を崩して、わざとらしく赤くなった顔を隠すように
手の甲を当てる彼女に顔が引き攣った。
昨日の俺の勘はやはり正しかった。
この女は、目の前の彼女は。
間違いない、俺の苛立ちを募らせ続けるアイツだ……!!
「……是非、これからも、
ご贔屓にしてくださいね、“
殊更にウインクをかまして、
棒立ちする俺の前から消えていった彼女を見送った刹那、
乾いた笑いが漏れた。
彼女のペテン師ぶりに更に苛立ちを募らせた反面、
彼女の身体能力と仕事における姿勢に対してだけは
忸怩たる思いではあるが、信用を募らせてしまった。
家に帰りすかさず、ポテトチップスを貪る彼女へ
テメェ何考えてんだと怒号を浴びせれば、
「だって、私の名前忘れてるみたいだったんで」
入学でもしときゃ流石に覚えるでしょ、貴方も。
決まって無表情かつ飄々と言った彼女に、
本雇用を言い渡した3日目はこうして幕を閉じた。
Day3 Reluctance【不本意】
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作者名:2ytluvuusham081 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時:2020年11月22日 11時