陽光の奏鳴曲 -第7番- (ページ7)

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第二十五章【LOSER】side:You ページ7

暗がりに1歩足を踏み入れた瞬間、ひゅう、と
冷たい風が頬を撫でた気がした。

屋内だというのに、
何故か外より気温が低く感じて体を震わせれば
後ろからふっと彼の鼻笑いが聞こえた。

笑ってんじゃないよまったく。

　まじで腹立つ。

なんで私がこんな嫌がらせを
彼女になってまで受けなければならないのだ。

こちとら病み上がりぞ、と心の中で悪態をつく私は
つい昨日まで病人扱いするなと言っていた女と同一人物である。

我がことながら、都合が良いのは認める。

都合がいいのは認めるが、
後ろで飽きもせず笑いを堪えている男には
帰ったら1発くらい拳をお見舞いしないと気が済まない。

　くそ、本当にくそ。

性悪とは彼の為にある言葉だと心から思う。

恐る恐るという表現がこの上なく似合う足取りで
暗がりを進んでいけばひとつのスライドドアの前に辿り着いた。

　えぇ、嘘。

これ開けんの。

誰が？私が開けんの？

時代なんだから自動扉とかにしとけよと
元も子もない悪態を再びついたところで
手の震えを抑えつつ扉に手をかけた瞬間、
ポン、と後ろから肩に走った衝撃にびくぅ！と体が跳ねた。

『ちょ、は！？馬鹿なのまじで！？』

「なんだよ、俺は肩に手置いただけじゃねーの」

『突然肩に手を置く意味がわかんないよ！！
やめてよもうそうやってビビらしてくんの！！』

「そりゃすまねぇな」

『思ってもない謝罪なんぞ要らんわ！！』

　まじでウザイ。

くっそ、この男を後ろにしたのは間違いだった。

至極楽しそうに笑っている彼は全然余裕そうで。

　こいつ高校の肝試しの時に死にかけたの忘れたんかと
彼の記憶力を疑ってかかるレベルだ。

恐怖心が若干怒りに変わったところで
意を決して扉を開ければ目の前に広がるは手術室。

……いやもう明らかに動き出しそうな奴いるんですけど！！

　真ん中に鎮座した手術台に寝転ぶ血濡れの人間の横を
絶対動くなよと念じながらすーっと通り抜けていたその時。

ポン、とまたも叩かれた肩に先程よりも大きく体が飛び跳ねた。

『んもう！！いい加減にしろよお前！！』

「や、前見て歩けよって言おうと思って」

『言えばいいでしょ言えば！！
なんでわざわざ黙って肩叩く必要あんのよ！！殺すぞ！！』

「分かったから早く行けよ」

『本当に嫌いだよお前なんか！！』