陽光の奏鳴曲 -第7番- (ページ47)

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２２…side:Keigo.A ページ47

ここまで強気だった王子は、
初めて俺を前にして弱音のような本音を吐いた。

それは別に俺に気を許してとか、
ましてや俺を信頼した訳では無いだろうが、
ただ取り繕っていた王子の仮面が
少し外れた瞬間を垣間見れば、自然と笑みが浮かぶ。

忍足が言った、可愛いやつっていう意味が
少しわかった気がした。

「……お前には、そう見えてんだな」

「は？そう見えてるってか、そうだろうが。
金も権力もあって、容姿も頭もよければ彼女も、いて。
そんだけ全部持ってりゃ不満も挫折も無縁だろ」

「確かに、そうかもな。お前の言う通り
今は休みがない以外に何一つ不満はねぇよ。
……今は、だけどな」

「……どういう意味だよ、それ」

「そのまんまの意味だ。
俺だって最初っから順風満帆だったわけじゃねぇよ。
お前が思ってる以上に、死ねたらどんなに
楽かと思える挫折は幾度となくしてきてるぜ」

「……例えば、なんだよ」

　俺の苦労話に興味を示したこいつは
これでもかと背けていた体を少し俺の方へ向けた。

おーおー。

ここまで俺の話をひとつ残らず
突っぱねてた癖に俺が苦しんだ話は
ひとつも漏らさず聞きてぇってのか。

　人の不幸は蜜の味とはよく言ったもんだと
少し顔が引き攣るのを感じながら隣の王子の顔を見れば
彼は絵本を読んでもらうのを待っている子供のように
目をキラキラと輝かせていて。

　そんな彼の期待に応えるべく、
苦労話を一つ一つ紐どいて話してやった。