陽光の奏鳴曲 -第7番- (ページ46)

今日:14 hit、昨日:7 hit、合計:12,448 hit

２１…side:Keigo.A ページ46

廊下から見た街路樹を少し歩けば、
相も変わらずぼーっと一点を見つめたまま
微動だにしない王子の姿が見えた。

わざと後ろから肩を叩いて脅かしてやろうかとも思ったが、
自分だったらブチギレるだろうなと思ってやめた。

人に合わせて気持ちを考えられるようになった俺は
本当に成長したと思う。まじで大人になった。

　大人の余裕を改めて心に抱きながら
彼の隣に腰掛けて足を組めば、
俺の姿を視界の端に感じたであろう王子は
一瞬目を見開いてサッとまた前に視線を戻した。

「……何しに来たんだよ、テメェは」

「お前がいなくなって女子会が始まったから
気まずくなって出てきただけだ」

「……そうかよ」

「で？お前は？
病室飛び出してまで、こんなところで何してんだ」

「別に。お前に関係ねぇだろ」

「ノリ悪ぃな、少しくらい男子会に
付き合ってくれたっていいじゃねーの」

「俺はそんなことするって一言も言ってねぇだろ。
1人で勝手にやってろ」

　ほんと、こいつ昔の俺によく似てんな。

自分が何よりも優れていると、最強なんだと
思っていたあの頃の自分そのまんま。

自分は選ばれた人間なのだから
目上も目下も関係ないと思っていた学生時代を
思い出していれば気づかないうちに鼻で笑っていて。

それが気に食わなかったであろう彼は
そんな俺を咎めるように睨んできた。

「何笑ってんだテメェ」

「いーや？
本当に昔の俺によく似てんなと思って。
別にバカにしたわけじゃねぇよ。
ただ、懐かしくなってつい笑っちまった」

「ハッ、お前と一緒にすんじゃねぇよ」

「……お前、友達いないだろ？」

「はぁ？なんだよ急に」

「いや？俺もいなかったから
お前にもいねぇんだろうなと思っただけだ。
いや、いなかったってより
友達なんかいらねぇって思ってた時期があったってだけか」

「……だから一緒にすんじゃねぇよ」

「ハッ、図星かよ。
ま、お前の気持ちは俺が一番よく分かると思うぜ。
悩みがあんなら今なら聞いてやるよ」

「……そんな事頼んでねぇだろ」

「アーン？一生に二度とねぇと思うがな。
大手財閥の社長相手に悩み相談出来る機会なんざ」

「ハッ、だからなんだよ。
お前に一体俺の何がわかるってんだ。
何もかも上手くいってて、
人生の挫折も知らねぇ様なお前には
何一つ俺の気持ちなんて分かんねぇよ」