陽光の奏鳴曲 -第7番- (ページ42)

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１７…side:Keigo.A ページ42

少し俯いて思い詰めている様子の
彼女はやはり唇を触っていて。

少しため息を漏らしてやれば、
彼女は俺の顔をゆっくりと見上げた。

「……お前のそのカッとなったら
止まらないところ、変わらねぇな本当に」

『うっ……だって……
跡部が悪く言われてるの嫌だったんだもん』

「……っ、かもしんねぇが、
さっきの言葉は男からしたら
バカにされてるようにしか思えねぇよ。
特に、好きな女からだったら尚更傷つくに決まってんだろ」

『別に好きでは無いと思うけど……
それに、そんなつもりじゃ、無かったんだけどな』

「だろうな。けど、誤解されるような言い方をした
お前が悪いと思うぜ。今のは」

『……どうしよ。謝った方がいいかな？』

「今はほっといてやれよ。
お前が行ったところでますます拗れるだけだっての」

『……でも私が悪いわけだし。
このまま放って帰るなんて出来ないんだけど』

「別にいいじゃねーの。
毎日顔合わせるわけでもねぇんだし。
次きた時にはケロッとしてるぜ多分」

『次なんかあるか分かんないじゃん。
それに、こんな気持ちのまま帰ったら
多分私永遠と悶々としてるよ？』

　……めんどくせぇ女だな本当に！

なんでそんなに他の男のこと気にすんだよ。
どんだけ俺を嫉妬させてぇんだこいつは。

まぁそんな小悪魔よろしく彼女が
悩んでいるのではないことなんざ分かっているが。

それでもいい気はしない。するわけがない。

　くそ、腹立つ。

腹立つってのに、こいつの為に
何とかしてやりてぇって思っている自分にも腹が立つ。
もう何もかもイラつく。

　ただ、こいつに行かせたところで
仲直り出来ようが出来まいが俺にとって
絶対いい結果にならないのは目に見えている。

仲直り出来なければこいつが
落ち込んで戻ってきて結局家で
悶々としたまま俺を放置するのがオチだし、
かと言って仲直り出来たとした方が俺的には最悪だ。

恐らく俺と同じような性格で考え方をしているであろう王子は
仲直りをしにきた彼女が自分のことを意識していると勘違いして
絶対に調子乗るタイプ。

なんなら俺だったら
確実にキスのひとつは寄越す。

　好きとまではいかないことが分かっていたとしても
自分に少しでも振り向かせるためなら
恋人がいようがいまいが手段は選ばない。

そしてこの鈍臭い阿呆はそれを避けない。

そんなことは絶対に許せねぇ。

　そうとなれば、だ。

彼女の気を晴らしつつ、
俺の保身を図れる残されたただ一つの方法。

「……はぁ。分かった。なら俺が行く」