陽光の奏鳴曲 -第7番- (ページ34)

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９…side:Keigo.A ページ34

最後、謎の言葉を残した忍足に
首を傾げながらこちらへ戻ってくる彼女は
俺の腕を掴んでどこかへ向かって歩き出した。

「……おい、お前一体俺をどうしよってんだよ。
トメって誰だ。王子って誰なんだ」

『ん？あぁ。見ればわかるよ！』

「……はぁ」

　まだここについて数分しか経っていないはずなのに
無駄に頭を働かせているせいでどっと疲れている気がする。

こんなことになると知っていれば
どっか行くか？なんて余計なことを言わず
場所を指定しておけば良かったと果てしなく後悔した。

　散歩に行きたくない犬とどうしても行かせたい飼い主が
ズルズルとリードを引きずるように俺を引いて歩くAは
忍足が言っていた303の病室を見るや否や
チラッと顔を覗きこませた。

何やら騒がしいそこが、
彼女の姿を見つけるや否や1層騒がしくなったのを感じていれば
俺の腕を離した彼女は病室へ飛び込んで行った。

「あれれ！！ Aちゃん！？
どうしたの急に～！！」

『へへ、トメちゃん久しぶり！』

「あらまぁ～
随分とまた別嬪さんになったわねぇ～」

『そんなことないよ！
シマさんこそ相変わらず元気そうで良かったです！
あっ、またシワ減りました？』

「またまたこの子は本当におだて上手だね～」

　やいやいと騒ぎ始めるそこから身を隠すように背を向け
スライドドアにもたれかかりながら彼女達の会話を聞く。

なんとはなしに向けた視線の先に
見えたのはウメザワトメコ、とハシマリエの
ネームプレート。

　なるほど。“トメちゃん”と、“シマさん”、ね。

大方、リハビリに通っていた時に
仲良くなった御老人達の見舞いってとこだろうな。

なんとはなしに理解した頭で
そのまま背を向けて聞き耳だけをたて続ける。