陽光の奏鳴曲 -第7番- (ページ31)

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６…side:Keigo.A ページ31

『そうなんです！あれ、初めてか？』

「私が知る限りでは、お2人揃って
あちらまでお送りするのは初めてですね」

『そっか。初めてだって、跡部』

「いや。知らねぇよ」

　そんな同調を求められても
いつもの場所を知らない俺に何を言えと言うのだ。

つまらなさそうに外を眺めていた俺に
気を遣ったつもりなんだろうが、
ありがた迷惑にも程がある。

なんなら少し苛立ちが増した俺は
冷たい視線を彼女へ送ってやれば
Aは気まずそうに視線を逸らした。

　そこからしばらく2人の会話に
軽く耳を傾けながらもぼーっと外を眺めていると
運転手が到着を知らせた。

途中寄った洋菓子店で買ったケーキを
手に持った彼女が颯爽と車を降りていくのを
見て同じように運転手が開けた扉の外に出れば。

目の前の建物にピタ、と固まる俺の体。

　ついでに顔を引き攣らせるのには十分すぎるくらい
いい思い出の無いそこに嬉しそうに入っていこうとする彼女を
ちょいちょいと手招きして引き止める。

『？？どしたの？』

「おい、お前が言ってたいつもの場所って
本当にここであってるのか」

『うん？合ってるよ？』