陽光の奏鳴曲 -第7番- (ページ27)

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２…side:Keigo.A ページ27

いい加減、目覚ませよってことか。

はいはい。

　寝転んでいた体を起こし、
負けじと無言でその水を受け取れば、
ふいっと顔を背けた彼女を視線で追いながら水を口に含んだ。

そんな彼女は洗濯カゴから洗濯物を引っ張り出して
パタパタとシワを伸ばしては干してを繰り返していて。

　その姿を見つめていたせいか、
喉に通した冷えた水のせいか。

今となってはどちらかなんて分かりっこないが
彼女の背姿を見つめたことで、
さっきの疑問の答えだけはなんとなく分かった気がした。

「……どっか行くか」

『え？』

　突然のお出掛け宣言をした俺に振り返った彼女は
ピンチに掛けようとしていた洗濯物をポト、と
重々しい音をたてながら床に落とした。

「だから、どっか出掛けるか？って」

『え、でも寝たいでしょ？久々の休みだし』

「まぁな。でも、お前と出掛けるのも
休みの日にしか出来ねぇだろ」

『……！』

　不機嫌だった表情はどこへやら。

口角をあげた俺を見て、
Aは嬉しそうに笑った。

　どこか行きたいところはあるのかと聞けば
彼女は落とした洗濯物を拾いながら
んー、としばらく考え込んでいる様子で。

彼女が考えている間、待ち時間を潰すように
ペットボトルの水を流し込んでいれば、
何か思いついであろう彼女は、あ。と小さく声を漏らした。

『そういえば、私。跡部と
行きたいと思ってたところあるんだった！』

「どこだ？」

『ふふ、それは行ってからのお楽しみ！』

「……？」

　洗濯物を干し終わった彼女は
意気揚々と俺の朝飯をテーブルへ並べて
鼻歌を混じらせながら支度をしに行った。

味噌汁を啜りつつリビングとクロークのある部屋を
忙しなく行ったり来たりする彼女を目で追っていれば
七変化よろしくあれこれ洋服を着替えていて、
何にしようか迷っているようだった。

　そんなに洒落こむ必要がある場所なのかと
分かるはずもない場所をサーモンを箸でつつきながら思い浮かべる。

すると漸く服装が決まったのか、
今度は一生懸命ピアスホールにピアスを通していた。

「一体どこ行くつもりなんだよ」

『ん？それはお楽しみだってば！』

「……車か？」

『あ、うん。
いつもの運転手さんも知ってるから大丈夫！』