陽光の奏鳴曲 -第7番- (ページ25)

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９…side:You ページ25

『っひゃあ！？』

突然横から声を掛けられて肩が飛び跳ね、後ずさった。

声がした方を見ればそこにいたのは、
腕を組み扉の横の壁にもたれかかる跡部様。

『な、な、なんで、何しに来たのアンタ！？』

「何しにって、お前のこと迎えに来てやったんだろうが。
それ以外ねぇだろうよ理由なんて」

『……なんでよ。そんなの、頼んで、ないじゃんか』

「頼まれなくたってくるだろ迎えくらい。
こんな時間に1人でほっつき歩かせる訳にもいかないからな」

『……子供扱いしないでよ』

「してねぇよ。心配だから来てやったってのに、
なんでそんな態度されなきゃなんねぇんだ」

　そんな態度。

彼の言うとおり、なぜ私はこうも素直になれないのだろうか。

ついさっきまで謝る気満々だったというのに。

口から出てくるのは嫌味のような言葉ばっかり。
ほんと、1回死ぬべきだと思う私。

　つーかこれか。

忍足が言ってた迎えってのは。

きっと彼と鉢合ったんだろうな忍足は。

ってことは最低でも30分くらい前からは居たってことか。

いや、あの感じだと手塚君も知ってたっぽいから
そうなればもう1時間以上前からいたのかこの人。

　……は？なにそれ。
だったら連絡1つ寄越せばいいのに。

なんで律儀に待ってんのこの人。
別に店の中に入ってくりゃ良かったじゃんか。

　いや、違うか。

跡部はきっと、私が気が済むまで、
私の気が落ち着くまで待っててくれただけ。

だったら家で待ってりゃ良かったのに。
わざわざ迎えになんて来なきゃ良かったのに。

迎えになんか来ちゃったら、
ちゃんと私の事考えてくれてるみたいじゃん。

　黙りこくった上に段々と俯いていく私を見た跡部は
ふっと鼻で笑った。

もう。

皆してなんなの本当に。

皆して馬鹿にしやがって。

どうせ馬鹿だよ。馬鹿ですよ！！

『……ほら、帰るよ』

「……偉そうに言うんじゃねぇよ。
一緒に帰ってください跡部様、だろ」

『くそむかつく……自分から迎えに来たくせに……』

「ならいい。俺は車で帰るが、お前は歩いて帰ってきな。
まぁ、玄関のチェーンは掛けとくがな」

『……一緒に帰ってください跡部様！！』

「ハッ、最初っから素直にそう言え。
いちいち噛み付いてくんじゃねぇよ」

『やっぱり腹立つ！！』

　結局、恋人同士になっても
なんら変わらない私の下僕具合は
きっと夫婦になっても
一生変わらないのだろうなと悟った瞬間だった。