月光の前奏曲 -第19番- (ページ48)

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⑮side:You ページ48

「……はぁ！？何言ってんだお前」

「そうだよ跡部！もう始まるぜ」

　声を荒らげた宍戸と
青いバトンで肩を叩いているがっくんが
謎の提案をした跡部に食ってかかる。

つーか、がっくんがバトン持っててどうすんのよ。

　それは置いておくとしても、
彼らの言う通り、何言ってんだお前である。

この期に及んで何を血迷ったかと
ザワつくレギュラー陣に少しも動揺しない
跡部はがっくんからバトンを容易に奪うと
奪ったバトンをジロちゃんに差し出した。

「ん？俺にくれるの～？」

「お前が先頭だ、ジロー」

「え！いいの！やったー！頑張るC～！！」

「なんで喜んでるんですか芥川さん……
普通嫌でしょ先頭なんて」

「まぁ、ジローは元々1走がいい言うてたからな」

　日吉くんが跡部の突然のワガママとも取れる発言に
うんざりしながら喜ぶジロちゃんに冷ややかな視線と言葉を送る。

同じく、ウンザリはしているのだろうが
そんな跡部に完全に慣れている忍足が
日吉くんを宥めるように肩を叩いていた。

やる気を出したジロちゃんと裏腹に
少し肩の荷が降りた私はほっとする反面
自分の走順はどうなるんだろうかと
ジワジワ差し迫る痛みで
思考が疎かになる中ぼやっと思った。

Aはどうすんだよ、と
私の心の声が届いたか宍戸が代弁するように言ってくれた。

　その言葉に宍戸の方を見たあと
ゆっくりと私に視線を移した跡部は、
相変わらず無表情のまま。

ただでさえ何を考えているのかまったくもって
分からないというのに、その表情も相まって
何一つ理解ができない私に、彼は口を開く。