１６…side:Mob ページ30
「はぁ。今度はなんだよ。これ以上何を、」
「帰りましょう」
「……は？ 帰る？ なんだお前。諦めたのか？」
「違います。そうじゃなくて、もう見つけたんで」
「見つけた？ 何を？」
「A先輩が、本当に欲しいもの。
だからこの勝負、私の勝ちです」
「は？ なんだよ、言ってみろ」
「……教えませんよ」
「はぁ？ お前俺様をここまで付き合わせといて何を……
っておい！！ どこ行くんだテメェ！！」
私を待ってくれていた彼の恩を仇で返す如く
彼に背を向けて走り出した私が向かう先は学園の部室。
A先輩が待つ、場所。
息が苦しくなるくらい全力で走って部室につけば、
何故かさっきまで一緒にいたはずの
忍足先輩と向日先輩が彼女と座って話していて。
私の突然の登場に目を見開いて驚いていた彼女に
息を整えて向き合った。
『リオ、ちゃん……？
どうしたのそんな急いで。っていうか、跡部は？』
「見つけました」
『え？ 見つけた？
見つけたって、私の欲しいものをってこと？』
「はい。A先輩が、本当に欲しいものは、」
その瞬間、私を追いかけてきたであろう
跡部先輩が部室に入ってきて。
扉をバン！ と少し雑に開けたあたり
堪えていた怒りが爆発寸前のようで
私の姿を見つけるや否やこちらに向かってきた。
そんな彼の背中に回り込んでA先輩の方へ少し押し出す。
「これです」
「は？」
「A先輩の、欲しいものは――――」
“跡部、先輩です”
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作者名：2ytluvuusham081 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時：2020年10月27日 20時
