月光の前奏曲 -第15番- (ページ10)

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８…side:You ページ10

『……なんで、誰もいない……？』

　意気揚々と扉を開けた先に見えたのは
電気が消えた人1人いない真っ暗な体育館で。

忍足ージロちゃーんといるはずの彼らの名前を呼ぶも
なんの反応もない体育館に不安を募らせていれば
カタン、と扉の方から聞こえた物音に振り向いた。

　立っていたのは、本日の主役の跡部くん。

今日一日色紙を集めるために駆けずり回っていた私は
おめでとうどころかまだ一言も交わしていないが故に
若干の気まずさを覚えた。

それは彼とて同じようで
私が口を開くのを待っている様子。

　くそ、どうすりゃいいのよ私は。

こっからどうすればいいのかなんて聞いてないってのに。

サプライズのはずがドミノ倒し状態になっちまってるよ。

　助けて忍足と暗闇の中佇んでいれば、
タイミングを見計らったかのようにピロン、となった
LINEの通知に目をやって全てを理解した。

“俺らからの誕生日プレゼントやって言って
体育館に呼びつけといたから、あとは頼んだで”

　……あの野郎。

忍足の思惑を読み切ったと同時にスン、と
スマホの電源を落とした。

あいつは、考えるのがめんどくさくなった訳では無い。

この状況へもつれ込ませる事こそ
考え抜いた末の誕生日サプライズだったのだ。

くそ、この為にか。

別に放課後まで待てばいいものを、わざわざ色紙を用意させて
私に考える余地も聞く余地も与えまいとしたのだあの男は。

　策士。天才。

それ以外言い様のない彼に尊敬の意を表したと共に
浮かび上がるはこの上ない殺意。

まぁ、こうなってしまった以上
本日の主役を放置して忍足を殺しに行く訳にもいくまいと
意を決して王様の元へ足を進めた。

『……来て』

「は？」

『いいから、ついてきて』