月光の前奏曲 -第15番- (ページ9)

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７…side:You ページ9

結局あの後、5分しかない授業間休みには全教室を走り回り、
昼休みまで潰してなんとか埋めた色紙を手に
放心状態になっていた。

そんな私を見た宍戸が
お疲れの意味を込めて自販機で
いちごミルクのパックを買ってきてくれた。

　本当に良い奴すぎる。

こんなことになるならお前に惚れときゃ良かったよまじで。

なんたって私がお昼ご飯逃してまで
跡部の為に働かなきゃいけないんだ。

私はお前の下僕じゃないって何度言えば分かるのだ。

　もうマネージャーですらなくなった今、
何のためにここまでして。と
いちごミルクを飲みながらも
緩和されない苛立ちを抱えていれば
私の頭はハタ、とひとつの事実を追求し始めた。

　そういえば、私って、跡部のなんなんだ？

確かに好きだと告白はされた。

ただ、別に付き合おうとは言われていない。

キスこそサラッとしてしまっていたが、
よく考えたら付き合ってもないのに
何を当たり前の顔をしてキスしているのだろうか私は。

　え、それとももう彼女なの？

いやいやそんな微妙な付き合い方ある？

でも、両想いと分かったことで
あの男からしたら彼女扱いになっているのだろうか。

いや、そんなこともあるまい。
跡部なら告白の際バラの花100本でも持ってきそうだ。

まぁそれだけは勘弁して頂きたい所存ではあるものの、
好きだと言われただけで終わるというのもどうも腑に落ちない。

　……え？嘘。私から告白しなきゃいけない感じこれ？

私が恥を忍んで付き合ってくれって言うの待ってんのもしかして？

もし本当にそうならばこんなところまで発揮される
跡部のサディスト力舐めてたわ完全に。

つーか普通告白なんて男からするもんだろ、
と考えてしまっている私はただの昭和女。時代錯誤甚だしい。

　……でも、せっかくならちゃんと付き合いたい。

堂々と胸張って、彼女です、って言いたい。

何の壁も無くなった今、
私達が付かず離れずの関係でいる意味は無い訳で。

とりあえず、聞いてみるしかないか。

　そう。

私のいいところは誰彼構わず
正面切って言いたい事を言える猪突猛進なところ。

考えても分からないことは聞くしかない。

聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥！

これだ。今日から私の座右の銘はこれ。

　とまぁ話が逸れてきたところで夕陽が完全に落ちたと同時に
向かうは彼らが待っている体育館。

だったはずなのに。