月光の前奏曲 -第15番- (ページ6)

今日:3 hit、昨日:15 hit、合計:17,640 hit

４…side:You ページ6

ほな。と電話を切った忍足は
一体何を考えてくれるというのだろうか。

まぁそれは任せとけって言われたから
いいとしても、このタイミングで
気づいてしまったのは幸か不幸か。

これならば明日学校行って
祝われまくってる跡部を見て気づいた方が
まだマシだったというのに。

それなら誕生日プレゼントを持ってなくても
当たり前だからこっちの気持ちもまだ救われた。

　なのに、気づいてしまった今、
このままノコノコ行けば
知っていたのに誕生日プレゼントを
用意しなかった女になってしまう。

それだけはどうしても避けたい。

腐っても好きな人だ。
嫌われるような真似はしたくない。

　そんなことをポケッと考えていれば、
時刻は20時を回っていて。

もう少し忍足が早く言ってくれれば
お店だって腐るほど空いてたというのに
本当に尽くタイミングが悪い。

　ダメだ。1回頭をすっきりさせよう。

歯磨きしてから考えよ、と向かった洗面所で
歯ブラシを手に取り、歯磨き粉をつける。

シャコシャコと歯を磨いていれば、
ふともう一つ用意された歯ブラシに目がいった。

彼が泊まった時に置いてったもの。

私の歯ブラシと並列されていたそれは
もうそこにある事が当たり前になりつつあって
特段気にも留めていなかったが。

　――――これだ。

ちょっと恥ずかしいし、誠に不本意だけどもうこれしかない。

今から買いに行かなくてもなんとかなる上に
ついでに言ってしまえば安上がりだ。

とまぁそんなゲスな発想は置いておくとしても
とにかくもう私に残された選択肢はこれしかない。

歯磨きして良かった！と先程よりスッキリした
頭でベッドに入った。

　まだ少し枕に残る跡部の匂いに、
顔を埋めながら、明日のシナリオを頭の中で
考えながら眠りについた。