月光の前奏曲 -第15番- (ページ48)

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１０…side:You ページ48

月を見上げながら言う彼の言葉を理解した頃
ボッ！と顔に熱が集まるのを感じた。

ついさっき、月が綺麗だな、と言った
姿も形も跡部とは違うミカエルさんと
口角をあげながら呟く跡部の姿が重なったのは
きっと跡部なら歯が浮くようなその言葉を
容易に言ってのけそうだと思ったから。

「……景吾坊っちゃまは、
今この瞬間をも貴女様のことをお慕い申しあげております」

『……そんな、ことは、』

「そんなことは無い、と仰いますかな？
ただ、私が今ここにいる理由は、
彼本人から承った命に従った結果ですよ。
A様がどう思われようとこの事実は変わりません」

　跡部が……？

わざわざ私を突き放すような事を言った跡部が一体何のために……

　理由は聞かなくても明白だった。

やはり、さきに放たれた彼の言葉は
嘘で塗り固められたレプリカだったのだ。

偶然だったのか、計算だったのか。

それを教えてくれたミカエルさんに
その言葉の意図を聞こうと向き直れば
ミカエルさんは数歩手前で立ち止まっていて。

「こんなことを今の貴女に頼む私をお許しください。

彼を、景吾様を、どうか宜しくお願い致します」

　彼は、一介の小娘である私に深く頭を下げた。