８…side:You ページ46
お抱えの執事たちに屋敷の外へと出されれば、
今の私には不似合いな綺麗な満月が夜空を彩っていた。
きっと、彼の言葉は本音ではない。
あの光無い目を見れば何となくそう思えた。
いや……もしかしたら今までの跡部が嘘で、
こっちが彼の本音だったのかもしれない。
どちらにせよ、
私にはあの目に光を取り戻すことは出来ない気がして。
もう、彼に関わるべきでは無いのだと
私の心は警鐘を鳴らしていた。
これ以上、彼の心を壊す真似はしたくない。
それならば彼の言うとおり、
お互いこのままが幸せなのかもしれない。
「……A様」
『ミカエル、さん』
月を見上げていた顔がいつの間にか俯いていた頃。
後ろから声をかけられその声の主を見ると
彼の付き人がぽつんと満月のスポットライトに当てられていた。
「夜も更けて参りました。ご自宅までお送りしましょう」
そう言うと、いつも跡部が乗っている
お金持ち御用達のベントレーに乗るように促される。
『わざわざありがとうございます。
でも、大丈夫です。1人で帰れます』
「そういう訳にも参りません。
貴女に何かあれば、私が景吾坊っちゃまに
叱られてしまいます」
『まさか。ミカエルさんも聞いていたでしょう。
二度と会うことのない人間の心配なんて、あの男はしませんよ。
……それに今日は、歩きたい気分なんです』
「ならば、私もお供致しましょう」
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作者名：2ytluvuusham081 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時：2020年10月25日 2時
