月光の前奏曲 -第15番- (ページ41)

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３…side:Keigo.A ページ41

慌てて制止をするようにAの腕を掴めば
Aは俺の方を少しもみずにその手を振り払って、
言葉を続けた。

『私には抗議する権利すらないのでしょうか。
それは、私がただの高校の同級生だからですか？』

「当たり前だろう。君にうちの家のことに口を出す資格はない」

『そうですか、では張本人である景吾さんが
嫌だといえば考え直されるのですか？』

「ハッ、嫌なわけがないだろう。
相手は公爵令嬢だぞ。これ以上に不足はない相手だ。
そうだろう、景吾」

「……っ、はい」

　有無を言わせない、その圧力に
何も言うことが出来ずに短い肯定の返事だけをすれば
満足そうに笑う父にAが顔をゆがめた。

「分かっただろう小娘。
お前に口を挟まれる言われも、筋合いもないんだよ」

『本当にあなたは何も分かっていない。
あなたは、18年間景吾さんの何を見てきたのですか？』

「なにがだ。私は誰よりも景吾のことを考えて言っているんだ」

『跡部のことを考えて……？
冗談にしても笑えませんね。
それなら私の何倍も景吾さんといたのに何故分からないんですか？
こんなにも苦しそうにしているのに、
心が悲鳴をあげているのに、何故気づかないんですか？』

「A……お前、」

　まったく声色には出さず、冷静に
話しているが明らかに怒っていて。

キレたらやばいやつだとは聞いていたが、
実際に色のない瞳を向けキレているAを初めて見た。

『水川さんとの婚約の話が無くなった時の
景吾さんを知っているというのに、
それでも、まだ考え直すつもりはないなどと
抜かす硬い頭をお持ちなのですか？』

「だからなんだ。今回の縁談はな、
水川とはレベルも格も違うんだ。
うちの繁栄には、必要な『……繁栄？』

『貴方は、自分の会社のためなら
跡部の人生がどうなってもいいって言いたいのですか？
それが、彼の幸せと、言いたいのですか……？』

「その通りだ。金や名声に勝るものは無い。
愛だ恋だのくだらない感情は、うちには要らないんだよ。
そこに景吾の気持ちがどうであろうと私の知ったことではない。
これがうちの『それが息子を前にして、言うことかよ！？
お前は自分の利益しか考えずに自分の息子を縛り付けて、
それで名声を得れば幸せだってのか！？』

「おい、落ち着け！」

『落ち着いてられるか！
こいつは自分の為に、アンタの人生を売ろうとしてんだよ！！』

「私の話を遮った挙句、お前だのこいつだの呼ぶとは……
なんと不出来で下品な娘だ。おい、誰かこのガキを連れ出せ」

『お前は、跡部の父親じゃねぇだろ！！』