月光の前奏曲 -第15番- (ページ40)

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２…side:Keigo.A ページ40

俺の言葉を無視して、勝手に理由を述べたAを
適当にあしらった後、彼女の言葉が一度では理解出来ず足を止めた。

『だから、跡部のお父さんに会いにきました』

　何のために。

そんなことは愚問すぎた。

こいつが考えていることは、嫌でも分かった。

俺の父に会う理由。そんなん決まってる。

俺の、婚約について
こいつは直談判しにきやがったんだ。

　ただ、父は今海外出張中で婚約パーティーが
開催される2ヶ月後までは帰って来る予定はない。

完全な無駄足だ。

「父は今海外だ。残念だったな。
そして言ったはずだ。俺は別に、」

「――――遅かったじゃないか、景吾」

　螺旋階段の上から聞こえる声に、
振り返ればそこにいたのは、海外にいるはずの父で。

やっぱり悪い夢を見ているのだろうかと
俺の思考は現実から逃げ果せようとしていた。

「どう、して、」

「思ったより、早く終わったものでな。
それで？そこのお嬢さんが私に何か話があると聞いたが」

『はじめまして、景吾さんのお父様。
私は景吾さんの学友の、AAと申します』

「お友達、ね。
それで、そのAさんは私に何を言いたいんだ？
あまり時間はとれないんだが」

　俺ですら話す前に一呼吸を要する父にAは
視線ひとつそらさずハッキリとした口調で
自分が何者かを名乗った。

腕時計を気にしながら、階段を降りてきた父を
見上げるようにしてAは表情を1つ変えずに話を続ける。

『大丈夫です。
長話をするつもりもないので、単刀直入に言います。
跡部……じゃなくて。
景吾さんの婚約を考え直しては頂けませんでしょうか』

「……！おい何を……！」

「……君はなんの権限があって、そんなことを言っている？」